海の泡になって消えるから -第4章-

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＿ワンッ！ワンワンッ！！




けたたましい鳴き声と一緒に扉を引っ掻く爪の音がカリカリと鳴って滑り落ちる。


逸る気持ちに押されるように手を伸ばしドアノブを捻ると、ガンッと何か固いものに当たった感触がした。




「……っ！？」




一瞬頭が真っ白になって咄嗟に何度も繰り返しドアノブを捻るけれど、それはガチャガチャという耳障りな金属音を立てるだけで一向に開こうとはしてくれない。



カギ…？
なんで……っ




嫌な予感ばかりが頭の中を支配して、無意識にドアノブを掴んだ手が震え出す。




＿ワンワンッ！ワンワンワン…



一際大きな鳴き声にハッとして視線を下げると、不安げに俺を見上げる綺麗な瞳と目があった。


ふーっと深く息を吐き、震える体をどうにか無理やり落ち着ける。
息を吐き切った時に鼻の奥がツンと痛んで、何故だか泣きそうになった。


耳を澄ませると、扉の向こうから僅かに聞こえる呼吸音。

時折咳き込みながらハッハッと苦しそうに繰り返されるそれは、どう考えたって普通じゃない。





落ち着け、

考えろ。

ここのドアは内側からしか鍵を開けられない。

考えろ。北山はどうして鍵を？


俺は今、何が出来る？






ぐっと拳を握ってノックを2回。

声が上擦らないように必死で腹に力を入れた。







＿「北山…？」




精一杯平静を装った俺の声は、アイツの耳にはどんな風に届いただろう。
返答は無く、沈黙の中でベンジャミンが「クーン」と小さく喉を鳴らす。


再度ノックをしようと拳を振り上げた瞬間、フワフワの柔らかそうな耳がピクリと動いた。





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