海の泡になって消えるから -第4章-

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頭からシャワーを浴びると、俺は手早く服だけ着込んでまるで逃げるように風呂場を後にした。


脱衣所を出ると廊下のひんやりした空間でびしょ濡れの髪が一気に冷えるのを感じたけど、ドライヤーをしに戻るなんて選択肢は俺には残されていなかった。







＿「先生ー…？」





リビングらしき部屋の扉を開けて声をかける。
部屋には外の荒れ狂う風の音が響くだけで人の気配はどこにも無い。

そのかわり、奥の暖炉の前で寛いでいた大きなワンコがゆっくりとした動作でこちらを振り向いた。

金色の長い綺麗な毛並みが暖炉の火の動きに合わせてキラキラ光る。



ゴールデンかな…？



賢そうな顔したワンコは “まぁお兄さん、こちらでゆっくりしなさいよ” とでも言わんばかりに俺の目を見たままフワフワの尻尾を振った。





「…お…おじゃましまーす」




家主が居ない部屋に勝手に入るなんて気が引けるけど、再び冷え始めた体は暖かそうな暖炉の誘惑には勝てなかった。

吸い込まれるように部屋に入り、カーペットの上にそっと腰を下ろす。

暖かい風が体にじわりと染み渡って、なぜだか涙が出そうになった。



綺麗なワンコは眠そうな目でのそのそ動いて俺にぴったりくっつくと、気持ちよさそうに寝息を立て始めた。




人懐っこいワンちゃん…

ベルなんて、初対面の人にはキャンキャン吠えて大変なのに。




まるで俺がここに来ること最初から知ってたみたいなその落ち着きは、同じ犬でもウチの愛犬とはかなり違うみたい。

やわらかそうな毛並みをそっと撫でると、触れた部分からトクントクンと可愛い鼓動が伝わった。




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