海の泡になって消えるから -第4章-

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「あ…」


『わかった？』


「この音楽…」




みつの声の後ろで、雑音に紛れてわずかに聞こえたメロディ。

どこかで聞いたことのあるような音ではあるんだけど、その曲に聞き覚えはない。





『これな、電車の出発メロディやねん』


「電車…？」


『うん。ホームで流れるやつ、』





聞き馴染みの無いその出発メロディに気付いた大倉くんは、これがどこの駅で使われてるものかを片っ端から調べたらしい。

その結果、たどり着いたのは皮肉にもみつが事故にあったあの最寄りの駅だった。






「え…でも、」






事件の前日も、みつはあの場所へ行ったってこと？

一体、どうして…





『…俺な、この留守電残した日もアイツは死のうとしてたんちゃうかって、思ってん。
それで一回思い留まって、俺に電話くれたんやって…』




＿“なんで…生きとる時にちゃんと話聞いたらんかったん”

あの日の大倉くんの悲痛な叫びが頭の中に蘇る。

そっか。だからこそ、大倉くんはずっと自分を責めて、苦しみ続けていたんだ。






『それでな、俺、この場所に行ってみてん。同じ場所に立てばアイツの気持ち少しはわかるかなぁって。
ほんま、今更やねんけど…』





あの短いメッセージの中の僅かな音に気付くのに、大倉くんは一体何回繰り返し聞いたんだろう。

もう二度と会えない友達を想って、どんな気持ちで一人、あの場所向かったんだろう。



＿“みつに合わせてあげたい”

心の底から、そう思った。





「大倉くん、みつはっ…！」


『そこのホームでな、ある話を聞いてん』






話…？



『俺はホームのベンチに座ってて、男が2人ホームの前の方に立って話しとった。
明らかにその業界の人やなってわかる強面の男』





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