海の泡になって消えるから -第4章-

Y ページ4

・



「…はい、はい。わかりました。
では、明日16時に。
はい、よろしくお願いします」





自分の吐いた息が目の前で白く濁っては消える。


見えるはずもない電話の相手に数回頭を下げて、俺は通話を切った。



フーッと長めに息を吐くと、同じだけ冷たい空気が肺に入って来て火照った身体を冷やしてくれる。

尋常じゃない手汗で携帯が滑り落ちそうになって、慌ててそれをポケットにしまった。







＿《話したいことがある》




そうメールが来たのは今日、着信があったすぐ後のことだった。

携帯に表示された名前を見たみつは
『へー！よこーさん、大倉と交流あったんだ！』と、嬉しそうに微笑んだ。

加えて『いいなぁ、おれも会いたいなぁ』なんて可愛い顔でつぶやきながら。





…バカみつ。


大倉くんが、本当に会って話したいのは俺じゃない。



本当に

もう一度会いたくてたまらないのは＿







『わったー…？』





呼ばれた声にハッとして振り返ると、ベランダの窓の隙間からをこちらを覗き込む裕太の姿が見えた。


寒そうに身を縮ませながら、更に大きく窓を開いて外に出てこようとしている。






「裕太…起きたんだ。寒いでしょ、中入ってな」


『いや、こっちのセリフだよ。なんでわざわざこんな寒いところで電話してんの？』




あまりにもごもっともなツッコミに返す言葉もない。



他のメンバーに聞かせたくなくてベランダに出たものの、

こんな姿を見られてしまえばそれはもう “聞かれたくない電話してます” って言っているようなものだった。



・

Y→←T

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す