海の泡になって消えるから -第4章-

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『うー』




「『『………』』」




『あ〜〜』




「『『………』』」





『あ゛ぁぁあ〜〜…』


『うるさい』







みつとガヤが家を出てから20分。


リビングの固定電話の前で三角座りしてそれを睨みつけている千賀からは奇妙な声が漏れ始め、対照的に冷めた口調の玉森がそれを一刀両断に切り捨てた。

いつもなら素直に謝る千賀も、今日ばかりは不満そうな顔で口をへの字に曲げて黙り込む。


みつ達が出てってすぐ、横尾さんは診療所に電話を入れて、2人が着いたら連絡をくれるよう先生に頼んでくれた。

もしもの時はすぐに探しに行けるようにと、みんなで準備万端でじっと待機。

一本の電話をただひたすらに待つ時間はやけに長くて、我慢の限界が近づいて来ているのは千賀だけじゃなかった。



チク、タク、



やたらと主張するように聞こえる時計の音が不安な気持ちをさらに煽る。


こんな時、いつもなら真っ先に『大丈夫だよ』って声をかけてくれる横尾さんは、眉間にしわを寄せてテーブルの一点を見つめるだけ。


ちらりと視線を巡らすと、歯をくいしばるように口を結ぶ玉森の横顔が視界に入った。





＿《なんで帰らないといけないの？》

＿《毎日絶対に戻らないといけないような治療があるってことはやっぱり…》






さっき、玉がみつに言った言葉が、頭の中をぐるぐる回る。



やだな。

必死に否定したみつの声も、苦しそうな玉の表情も、全部全部悪い想像にばかり繋がっていく。


ふと、脳裏にみつの胸にあった大きな傷跡が浮かんで、一瞬にして呼吸が詰まったような感覚になった。


ぶんぶん頭を振って振り払っても、寝不足の頭が少しふらつくだけ。





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