海の泡になって消えるから -第4章-

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『よし！これにしよう！ホラ、そのデカいのはやく脱いで！！』




めんどくさがりながらも、しぶしぶ服を脱ぎ始める。

薄手のインナーだけになったみつは、あれだけ食べていてもやっぱり細かった。

そしてインナーもやはり大きめで、首元がだらんと大きく開いて、

寒そうだなぁ…

なんて思った矢先、ひゅっと一瞬息が止まって動けなくなった。




固まった視界の中で、同じように目を見開いて固まる千賀が見える。


頭がグラリと平衡感覚を失って、シンクの縁をぎゅっと握った。









みつの胸元、首の真下から大きく引かれた、
赤い一本線。




手術の痕のような、新しくてまだ痛々しい、傷跡。






過去のものとなっていたみつを失ったときの恐怖とか絶望が、色濃く胸を支配していくのがわかった。



オレたちの変化にすばやく気付いたみつが、はっとした様子で胸元の傷を隠す。





『…っ悪い、』




ははっと、笑って誤魔化そうとするみつをオレは直視することが出来なかった。





『…みつ、その傷…』


『なんでもねーよ！なんか色々治療したから、その痕が残ってるだけ。まーそのうち消えんだろ！』





みつがあまりにも元気そうに振る舞うから、忘れかけていた。

みつの身に降りかかった事の重みに。





『痛い…？』


今にも泣きそうな顔で尋ねる千賀に、みつは『ぜーんぜん！』と笑う。


本当に、なんでもないみたいにカラカラ笑う。


オレはいつまでも震えの止まらない手を落ち着けようと、何度も大きく深呼吸を繰り返した。




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