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食器を洗いながら何度目かの視線を壁掛けの時計に向けると、さっき見た時から2分しか進んでいなかった。
みんなはもうそろそろ診療所に着いただろうか?
ニカあたりが『やっぱり帰りたくない!』なんて言って、困らせてたりしないかな。
明日は何時に来るんだろ。
天気予報では雨だったけど、せめて朝だけでも降らないといいのにな。
急に静かになった家はどうにも落ち着かなくて、ソワソワしてると隣からクスッと小さな笑い声が漏れた。
「…なに?」
『いや…、そんなに気になるなら、太輔も一緒に行ったらよかったのに』
ニヤニヤ意地悪な笑いを浮かべるこの男は、こういう事になるとやけに勘が鋭い。
「別にそんなんじゃないよ。ただ、もう暗いしニカ達の心配してただけ!」
『俺も別に北山さんのことだなんて言ってないけど?』
あ…。
思わず顔を上げるとさっきのを上回るニヤニヤ顔が視界に入って、まんまと墓穴を掘った自分を殴りたくなった。
「…渉こそ、別に片付けなんて後にして一緒に行けばよかったのに。
さっきからチラチラ携帯ばっかり見て、一体誰からの連絡を待ってんの?」
さっきからかわれた仕返しのつもりでニヤニヤ顔をお返ししたのに、
俺の予想に反して渉の表情は一瞬明らかに強張ったように見えた。
「わた…?」
『…別に何でもないよ。
俺そんなに携帯見てた?たぶんあれだ!最近アプリで野菜育ててるからだ!』
「アプリ…?」
『見てコレ!そろそろカボチャが収穫出来るんだよ!』
スマホの画面を見せながら、妙に高いテンションで話を逸らそうとする渉は
本当に嘘のつけない人だと思った。
「渉」
強い口調で名前を呼ぶと、隠し事がバレた子供みたいにシュンと肩を落とす渉。
『…ごめん、わかってる。でも今は聞かないで』
「なんで?まさか危ない事…」
『違う!そうじゃない、ただ…』
「ただ…何?」
ゆっくりとした瞬きを2回。
続けてフゥと大きく息を吸った渉は途切れ途切れに言葉を紡いだ。
『俺の、問題…だから。
だから、今は言えない。
明日の夜、話すから、だからもう少しだけ俺に時間をちょうだい?』
落ち着いた口調に反して向けられた目は必死で
それ以上、問い詰めることなんて出来なかった。
賑やかな弟達がバタバタと家に帰ってきた頃には、渉はもうすっかりいつもの渉だった。
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たいちゃんらぶ(プロフ) - 怯むな!!イケーって思わず言ってしまいました‥( ;∀;)移行後も楽しみにしています♪いつもありがとうございます♪ (2018年5月29日 20時) (レス) id: eaab40e8e1 (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - うにゃっ(*´ω`)たいぴとみっくんのシーン・・相当気になっていたのでココでFside・・キターってなりました‥ワンコのベンちゃんがホントに優しくって良い子で‥今のたいぴには必要な存在ですね(あ‥ベルがヤキモチ妬いちゃうかもww)先生に問いただすたいぴに (2018年5月29日 20時) (レス) id: eaab40e8e1 (このIDを非表示/違反報告)
萩好き(プロフ) - 更新ありがとうございます。また楽しみにしつつ今後の展開も気になります。 (2018年5月29日 18時) (レス) id: ee43c6b79a (このIDを非表示/違反報告)
mini7(プロフ) - たいちゃんらぶさん» たいちゃんらぶ様♪コメントありがとうございます(*^^*) 私も千ちゃん語り描くの好きなんです!なんか感情が素直でわかりやすい人だなぁと思うので、ついつい頼りがちです…♪ ただいま続編を絶賛準備中ですので、どうぞ続きもよろしくお願いします♪♪ (2018年5月29日 18時) (レス) id: c0e211fc37 (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - てなる千ちゃんはやっぱり可愛いし♪そしてニュースに流れたみっくんの名前についビクっとなってしまいます( ;∀;)真崎君がとった行動にはどんな真意があり何をもたらすのか…もぅ毎回目が離せません。宮玉に救いをっていうmini7サンの言葉にウンウンって頷きましたー (2018年5月28日 21時) (レス) id: eaab40e8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini7 | 作成日時:2017年10月14日 0時