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夕暮れ前の話 ページ5

ー2010年/6月8日(火)ー


 6月。日本という縦長い島国は少し前から梅雨の時期に入っていた。今日は雨がどのくらい降るなどと、永遠と繰り返すニュース。
 ここ横浜という地はじめじめとした空気で、あちらこちらからキノコでも生えそうだ。加えて嫌に冷たい気温に、気が滅入ってしまう。
 開放的に大きく開いた教室の窓から、ライはぼんやりと空の雲を眺める。今日も今日とて雲の量が多く、スッキリしない天気だった。

「──Miss.Ortensia. Please read the first sentence.」

 何も考えず空を眺めていると、授業に無関心そうなライの態度を目敏く見付けた教師の言葉が彼女へ飛ぶ。
 突然の指示にも関わらずライは外へ向けていた顔を机上の教科書に戻し、ゆっくりと立ち上がって最初の英文を読み上げ始めた。何も言わないが渋々といった様子だ。

(……読む必要、あるのかしら。)

 授業の初めに、既に教科書の英文は確認の為にと読み上げていた。いくら授業に集中していなかったとはいえ、明らかに時間の無駄な事をやらせる必要とは…と思う。
 抑揚を付けずに淡々とした声で英文を読み上げていると、途中で終業を告げるチャイムが鳴った。矢張り時間の無駄だったのだと思うと、何とも腹立たしいような。
 はい今日はここまでー、と。こちらもやる気のなさそうな教師の声で、またもや覇気の少ない日直の号令で授業は終わった。

 有意義ではないと言えば聞こえは悪いが、内容が濃いものでないので矢張り有意義ではないのだ。そんな苦行のような今日最後の授業を、溜息と共に締めくくる。
 先の6時間目、英語の授業は言わずもがな。特に1時間目のイタリア語の授業と、5時間目の聖書の授業なんて釈迦に説法もの。
 『イタリアからの留学生』という設定でこの高校──女学校、しかも珍しい厳格なカトリックのミッションスクール──に居座っているのに、イタリア語を学びましょうなんて馬鹿げた話だ。既にイタリアの神学校を卒業しているライにとって、聖書の授業は眠気を誘われる程につまらなかった。
 ラテン語の学習をしている方が身の為である。

「はいこれ、オルテンシアさん。今日の課題のプリント。」

「ありがとうございます。」

 前から回されたプリントをファイルに入れる。ファイル越しにプリントを見れば、課題内容は長英文を和訳するもののようだ。とりあえず小さく鼻で笑っておいた。
 どうでもいいが、ライが嫌うのはロシア語である。

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作者名:紫陽花 | 作成日時:2020年3月24日 0時

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