鬼と呼ぶには優しすぎる２【土方十四郎】

生死 ページ8

土「爆発から反対の方へ向かう。そっちの方が浪士も少ねえだろ」


「はい」


土「怖くねェのか？」


「さっきまで怖かったけど皆さんが居るから大丈夫です。
それに土方さんが傍に居て下さるので」


土「そうかよ」




紫煙を吐く背中にぴったり引っ付いて歩く。


ダッダッダッと激しい足音が耳に届き、
咄嗟に振り返ると目の前に剣先が迫っている。


浪「死ねェ！！！！」

「ひっ」


体が固まってただ驚いていると、
腕を引かれて土方さんの背中の後ろに隠された。

飛んできた刀を刀で受け止め、ガチガチと音を鳴らしている。




土「俺が居んのに殺れる訳ねェだろうが」


浪「くそ…ぶっ殺してやる…」




懐から取り出した爆弾の起爆スイッチを押そうした。




土「A目閉じろ！」


「はい…！」




ぎゅっと目を閉じると、何かを撥ねる音。
小さな何かがゴトっと床に落ちる音。

剣が何かを射抜く音。
そして、大きな何かが床に倒れる音がした。




土「っはぁ、もう大丈夫だ」


「はい…」




恐る恐る目を開けるとそこには右手首から先が切断された屍が転がっていた。

…きっと爆弾を起爆しようとしたから右手首を撥ねられ、
そのまま心臓を貫かれたんだ。

本物の死体…。血の気が引く感覚がする。

でも、彼の死が私を生かした。




土「…あんま見んな。行くぞ」


「っ、」




足早に歩き出した土方さんのジャケットの裾を摘み、
頭から離れなくなった血塗れの屍を頭から追い払おうと必死だった。




▽




# Side T




適当な部屋に入って扉から1番離れた壁に背をつける。
疲れた様子のAを座らせてその横に立つ。

あの死体を見て以降Aの顔は真っ青だ。
かける言葉が見つからなくて、ただ天井を見ていた。

あれから十数分経つが浪士は現れねェ。
総悟たちが上手くやってんだろう。

そんなことを考えていればポケットの携帯が震え、耳に当てる。




沖「もしもし土方さん、片付きやしたぜィ」


土「早かったな。そっち戻る」


沖「はい。生きてる奴ァ拘束済み、死んだ奴は全員回収済みでさァ」


土「わかった」




電話を仕舞い、Aに手を伸ばすと小せェ手で俺の手を握って立ち上がる。




土「片付いたらしい。行くぞ」


「一安心ですね」




後ろに着いてくるAを遠ざけたくて、
なんとなくいつもより早足で歩いてしまうのだった。

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