一 石 二 鳥 彼 氏 【坂田銀時】

一石四十二鳥 ページ43

# Side G



Aが厠に立ったのを見て、母ちゃんが真剣な顔つきになる。



母「あの子、昔に男の人と揉めたことあってね。それ以降人とも関わらなくなって、私達とも距離置きたがって家も出ちゃってね。」


昨日聞いた話のことだろう。
寂しそうな顔をしている。



母「連絡も少ないし自分のことは滅多に話さないし、心配なんだけど銀時くんといれば大丈夫そうね。
これからもあの子のことよろしく頼むわね。」

銀「はい。Aさんのことはしっかり守るんで。安心してください。」



なんて、こんな無責任なこと言っちまってもいいのか。

この気持ちに嘘はねェが、あと2週間で俺達の偽恋人の関係は終わる。

その後彼奴はどうする？

松田の事はなんも解決してねぇのにまた1人で抱え込むつもりなのか？

もやもやと考えていたらAが帰って来た。



「そろそろお開きでいいんじゃない？お母さん明日も予定あるでしょ。」

母「そうしよっか。あ、銀時くん連絡先交換しよ。」

銀「Aの日報送ります。」

母「楽しみにしてるわ！」

「送らなくていいから！もう。」



Aのことよろしくね〜と手を振る母ちゃんと分かれてAを家まで送る。

ふと横を見ると、浮かれた野郎ばかり歩くかぶき町には不似合いな浮かない顔をしてやがる。



銀「母ちゃん騙して心苦しくなったか？」


そう聞けば、


「図星やめてくんない？」


と、辛そうに笑う。分かりやすいんだよ。



銀「雇われてるの俺が言うのも可笑しいけどさぁ、母ちゃん騙して一時的に安心させることに意味あんのかよ。」

「…先のことはまた考えるよ。付き合わせちゃってごめんね。」



深い深い溜息を吐いている。

罪悪感はしっかりあるらしい。




気づけばもうAの家の前。

じゃあね。と元気なく手を振る彼奴を見送って万事屋へと足を進めているけど…

心配だな。彼奴の事ばっかり頭に浮かんじまう。

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