【番外編】弟が見てて思い付いた ページ8
私立探偵によるまともな聴取が始まった。
……これ、アリバイがあるかどうかって聞いてんだよね？
午後1時から午後3時半……。
詳しい時間は覚えてないけど、光忠のご飯食べてから散策を始めた訳だから…。
その時間は大体、家からこの辺りをぐるっと回ってた頃だろう。
だが、これはアリバイとは言えないよなぁ。
行安「その時間でしたら、私たちは全員でこの米花町を散策しておりました」
安室「散策、ですか…？」
行安「えぇ。なにぶん、私どもは先日越してきたばかりでして…お恥ずかしながら、この辺りのことが全く分からないもので。
ならばみんなで散歩でもしながら覚えよう、となったのです」
村正「けどよォ、それじゃァありばい、とやらにゃァなんねェンだろ？」
安室「そう、ですねぇ……」
なんでこの私立探偵が事件の詳細を知ってるんだ、とかその他諸々ツッコミたい箇所はあるが、我慢だ。
妖刀組が頑張って話を引き伸ばしてくれてるんだから、なんとかして無実を証明することができないか考えよう。
「ねえねえ、お姉さん」
思考の海に潜ってしまおうとした途端、そんな声と共にジーンズを引っ張られる。
いつの間にやら側に来ていた先ほどのガキの一人が私を呼んだらしい。
その顔に不釣り合いなほどの大きなメガネに、ピアノの発表会にでも行くの？と言いたくなるような格好の子供がそこにいた。
あまりのその近さにゾッと肌が粟立つ。
蹴り飛ばしそうになる体をグッと抑えて首を傾げて何か？と尋ねる。
すると子供は無邪気に見える笑顔でとんでもないことを口走った。
「今日はあったかいのに、どうしてお姉さんはそんな厚着をしてるの？
それに、帽子の上からフード被ってるのも変だよね？
まるで、見たくないものから目を逸らしてるみたいじゃない？」
キラーン。
メガネが反射して子供の顔は見えないが、何か確信を持ったような言い方に苛立ちが募る。
ただでさえ、訳の分からない足止めを食らっているのに…。
なんだ、このガキは。
そんなに知りたいのなら、こっちだってそれなりの返答があるんだぞ。
一刻も早くガキに手を離してもらうために、しゃがんで視線を合わせる。
つっても、顔はよく見えないだろうけど。
A「……少年、メガネがえげつない反射をしているが、ちゃんと見えてるか？
見えないようなら新しく、ちゃんと自分に合ったメガネを作ることをお勧めしよう」
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