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来週には東京都の中総体が、さらにその次の次の週にはJOCジュニアオリンピックの東京都予選が迫っている。
今日の午後に行われる記録会は、大会前の最後のタイムを測る機会だ。
記録会のあとにそれぞれのタイムと順位が公開される。そのためか今日は朝練から妙に殺伐とした空気が流れていた。毎度のことだから慣れてはいるが、居心地はあまり良くない。
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9時から2時間半泳ぎまくり、1時間半の休憩タイムがやってきた。
休憩スペースで各々がお弁当を開く。私はこの、2階の窓から下のプールを覗ける場所がお気に入りだ。
「川瀬は？あんたらしょっちゅう一緒なのに」
「私からしたらそうかもだけど、あいつは友達いっぱいいるじゃん」
波多野が私の隣の席にお弁当を置いて座った。
「話しかけてくるなんて珍しいね」
「さっき話してるの聞こえたんだけど。塩崎、梟谷考えてんの？」
波多野はしっかりと手を合わせてから箸を手に取った。私は波多野の意外と律儀なところが結構好きだ。
「推薦来たらね。うちから近いし」
「私は絶対梟谷行く」
「……？そう、声かかるといいね」
「推薦来なくても行くの」
「一般で梟谷？それならもっと強いところ行ったほうが良くない？梟谷ももちろん強いけどさ」
「はあ？馬鹿じゃないの、梟谷の設備の良さ舐めんな」
確かに今朝行ったときも体育館の数に圧倒されたし、以前学校のホームページに載っていた屋内プールの様子は、かなり大きく綺麗だと感じた。
「それに、私の憧れの選手が梟谷出身なの」
「当時と同じ人が監督やってんの？」
「そうだけどそうじゃない！お前のそういうところほんと嫌い」
また嫌いと言われてしまった。波多野はいつも私のことが嫌いだと言う。
いつも、というほど頻繁に話しているわけではないけれど。
「私は推薦来なかったら普通に行けるとこ行くしかないかなあ。水泳部なくてもここ続ければいいし。部活あった方が大会の手続きとか楽でいいんだけどね」
「……それは、ないでしょ」
「一緒に通えたらいいね」
ほぼ同じ時期にこのクラブに入会した私たちは、学区も家の方角も違うため小学校も中学校もずっと別々だった。
波多野は私のその言葉には答えなかった。
「……いつもこの時間見ないけど、なにしてんの」
「お弁当食べたあと外散歩してる」
「このクソ暑いときに！？……ほんと、意味分かんないんだけど」
「やってみなよ」と笑って言った私に波多野はぶっきらぼうに返事をして、あとは何も言うことなくお弁当を食べすすめた。
波多野とちゃんと会話をしたのは、随分と久しぶりのことだった。
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作者名：ねむねむねむね | 作成日時：2024年2月26日 23時
