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「やっぱり1人で帰るよ。裏門の茂みのとこに自転車放置してあるし」

「明日取りにいきゃいいじゃん、1日くらいバレないって。監督も上で邪魔せず見てんならいいって言ってくれてんだし」


靴下で体育館の床を踏ん張れるはずもなく、お兄ちゃんに引きづられて滑るようにして体育館に入っていった。視線が痛い。


「お前バレー見るの好きだろ?」

「そりゃそうだけどそれとこれとは別っていうか……」

「ほら、さっさと登れ」


ぽんっと背中を叩かれ、上の通路につながる梯子の前に放り出された。渋々私は梯子を登った。


「母さんに連絡しとけよー」


ちょうどそのとき、監督らしき人が「集合ー」と声をかけ、休憩時間が終わった。

私は2面のコートがどちらも見える通路の真ん中辺りで体育座りをして、ため息をつきながら携帯を取り出しお母さんにメールを送った。





バレーの練習をこんなに近くで見たのは初めてだ。

試合形式の練習は、悔しいことにちょっとだけ面白かった。

久しぶりにお兄ちゃんのプレーを見た。前に見たときよりも上手くなっていた、と思う。私が知らない間にジャンフロを習得していたようだし。


「木葉ー!!ちょっとだけトス上げてくれー!!」

「木兎のちょっとはちょっとじゃねえんだよなあ」


一時間半くらいして練習が終わったあとすぐ、元気な声が私の耳まで届いた。自主練もするなんてさすがだなと呑気に考えながら、人が減ったのを確認して私は梯子を降りた。


「なー、ちょっとサーブ練付き合ってくんね?」


こっちにもいた、元気な奴。


「なんで私?」

「今日はみんな早く帰るっていうからさ、電車激混みなんだって」


体育館に残っているのは私達と木兎さんと木葉さんだけだった。

外を見てみると雨は激しさを増していた。


「どうせ俺いないとお前帰れないじゃん、付き合って」


確かにそうだ。ここまで雨が強くなってしまったら自転車を漕ぐわけにはいかない。

私は「わかった」と言った。


「何すればいいの」

「こっち側でレシーブの構えして好きなとこ居てくれればいいよ。ジャンフロ、まだうまくコントロールできないんだよね」


私は靴下とスカートを脱いで壁際に置いた。スカートの中からハーフパンツがあらわになった。

スパッツは好きじゃない。防御力が低いから。


「本当に立ってるだけでいいの?」

「顔とか当たりそうだったらちゃんと避けろよ、怪我されるわけにいかねえし。それに」


ネット越しでもわかるくらいお兄ちゃんはにやりと笑った。


「そう簡単に上げさせねえよ」


私も釣られてにやりと笑う。


「上げられるんなら上げちゃってもいいんだね?」


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作者名:ねむねむねむね | 作成日時:2024年2月26日 23時

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