ページ49
・
フレッドに謝りたい気持ちでAはいっぱいだった。
だが今の状態でフレッドに会っても、余計フレッドを傷つけるだけだと思った。
Aはグリフィンドールのテーブルに背中を向けるようにして座ってご飯を食べ、廊下は細心の注意を払って歩いた。
昼休みと放課後はずっと図書館にいた。
Aはいつもの席で、宿題を進めようと羊皮紙と教科書を広げていたが、やる気が出ず机に突っ伏していた。
「A、起きてるか？」
その声に、Aはガバッと頭を上げた。
「………なんだ、ジョージか」
「悪かったな、フレッドじゃなくて」
顔が少しずつ熱くなるのを感じて、Aはまた顔を伏せた。
「別に、そういうんじゃないわ」
「素直になれよ」
ジョージはAの向かいに座って、Aの教科書をパラパラと捲った。
Aは瞼にこみ上げてくるものを抑えて、ジョージに尋ねた。
「フレッド、怒ってた？」
「いや、落ち込んでた」
「………そう」
Aは顔を上げようとはしなかった。
「どうすればいいのかわからないの」
「あいつも同じこと思ってると思うぞ」
「どういうこと？」
「そのまんまさ____あいつがマジで好きになったの、Aが初めてなんだ」
「ずっと一緒だったからわかる」と、ジョージは言った。
「私、フレッドにひどいことしちゃったの」
Aは目を細めて、机の上で組む手を見ながら話しはじめた。
「フレッドが私のこと好きじゃないといいなって思ってた。でも、嫌でもわかるわ、あの人が私を見る目は優しかったから____気づかないフリして、都合のいいときだけフレッドの優しさに甘えて、利用したの。私ってすごく自分勝手で嫌な女ね。フレッドが誤魔化されてくれるのをいいことに____全部バレてたけど。私、本当は____」
Aはどうしても顔を上げられなかった。目の前にいる彼にそっくりな人は、別人だったから。
「____あなた達の家に泊まりに行ったのは、フレッドに会いたかったから」
フレッドの手は、いつもAに笑顔と安心をくれた。
こんなことをジョージに言ったところで意味はないと、Aは重々分かっていたが、誰かに吐き出したかった。
「誰かに会いたいときに、来てくれるのはいつもフレッドだけだった」
ジョージは「だろうな」と笑った。
「それ、本人に言ってやれよ」
Aは苦々しく笑った。熱いものが目元のすぐそこまで来ているのを、なんとか堪えている。
「頼むからここで泣くなよ」
「泣かないわ、あなたの前じゃ、絶対に」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 383人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねむねむねむね | 作成日時：2023年4月5日 23時
