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「ここ空いてるわよね」
Aはノットが一人で使っていたコンパートメントにノックもせず入り込んだ。
「空いていないと言ったらどうするんだ？」
「空いてないわけないじゃない」
Aはドカッとノットの向かいに座り込み腕を組んだ。ノットはAと目を合わせようとしなかったが、構わずAは続けた。
「私がシリウス・ブラックの仲間だとかいうくだらない噂を流したのはあなたでしょ」
ノットは少し肩をピクリとさせた。
「なぜそう思うんだ？」
「同じ学年のハッフルパフ生とレイブンクロー生に聞いたわ____噂の出処なんて大して興味なかったけれど、悪い噂話にはなにか大きなきっかけがあることもあるって、知ってしまったからね」
Aはシリウスと、スキャバーズ____ピーター・ペティグリュー____のことを思い浮かべた。
「そいつらが本当の事を言っていると思うのか？」
「聞いたのは彼らだけじゃないわ。具体的な名前を答えたのが、彼らだったってだけよ。それに、彼らは嘘をついていないと思うわ」
Aは左腕をまくり、ノットの前にズイッと差し出した。Aの腕には毒々しい闇の印が刻まれていた。
ノットはぎょっとしたが、すぐに冷静になった。
「それ、偽物だろう」
「あら、偽物だってわかるのね」
Aがタオルで腕を拭くと、綺麗さっぱり闇の印は消え去った。「これ描くの結構うまいでしょう？」とAは笑った。
「これ見せたらご丁寧に教えてくれたわよ。おまるを磨くために学校中歩き回ってたから、いろんな人に聞けた」
「悪趣味だな」
「そうかもね」
ノットは深くため息をついた。
「____僕はただ、休暇中に父上から君の父親とシリウス・ブラックが親しくしていたと聞いて、もしかしたら君も仲間
「都合よく言ってくれるじゃない」
苛立ちを隠しきれずにノットは忙しなく指を組み直していた。
「ちょっと幼稚なんじゃない？」
「人前で恥ずかしげもなく拳を振り回すお前が言えたことか？」
「グリーングラスにもそれ言ってあげなさいよ」
「そんな顔するなよ。僕に幼稚と言われたのがそんなに気に食わないか」
ムカついて、Aはハッと鼻で笑った。
「三つ先のコンパートメントにマルフォイ達がいたわ、もうそこしか空いてないんじゃない？」
「……お前のそういう、ヘラヘラして、僕達を見下す態度が心底気に食わない」
ノットは荒々しく席を立ってコンパートメントから出ていった。
それからAはギングズ・クロスまでの道を、汽車に揺られながら寝て過ごした。
次の新学期まで、二ヶ月もある。
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作者名：ねむねむねむね | 作成日時：2023年4月5日 23時
