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第五話「冷房」 ページ5

その日は、427号室は開いてなかった。


しばらく閉まった扉を見つめて、拳を握り締めた。

彼女にもう一度会いたい。

そんな思いが膨れ上がって、扉に手を掛ける。


冷たい。

足元から冷たい空気が出ていた。

額から汗が滲み出る。

喉の奥から異物感がした。


なんだか嫌な気だ。


だけど、それでも意を決して小生は扉を開けた。

冷たい空気が全身に澄み渡る。


ベッドに腰掛けるあの少女が、こちらを驚いた目で見ていた。


何もおかしな点は無い。

なら、この部屋の冷たさはなんだ?


『あらあら、また来たのね。そんな所に立ってないで入ってきて。廊下は冷房が効いてなくて暑いでしょ』


冷房……。

あぁ、なるほど。

今は夏、冷房を付けるのは何の不思議も無い。


「それにしてもこの部屋、寒過ぎませんか」

『私暑がりなの。生まれ月だって冬なのよ』


生まれた月と、暑がりはあまり関係の無いように感じるが、そうか。


小生は何を想像したんだろう。

だけど、扉の外にいた時、確かに嫌な感じがした。


まるで、この427号室が霊安室になったような。


「なんて、小説の書きすぎか……」

『小説?あなた小説を書くの?』

「え、えぇまぁ」

『……すごい!どんな話なの?私、興味があるわ』


少女の子供みたいに目を輝かせる姿に、心臓の鼓動が少し早まった気がした。

第六話「秘密」→←第四話「またね」



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設定タグ:ヒプノシスマイク , 夢野幻太郎   
作品ジャンル:恋愛
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黒羽ひみと(プロフ) - いじいじさん» 初めまして!神です!(嘘ですよ) 読んでいただきありがとうございます♪ (2020年10月5日 1時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
いじいじ - えぇ…神ぃ……? (2020年10月1日 12時) (レス) id: 071f62e8cb (このIDを非表示/違反報告)
そまそまりつりつ(プロフ) - 黒羽ひみとさん» まじですか?あの駄作を…神ですね。こちらこそこんな素敵な小説を読ませて戴いてありがとうございます (2019年7月23日 23時) (レス) id: 179de70c1e (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - そまそまりつりつさん» コメントありがとうございます!そまそまりつりつさんの作品最近見たので、テンション上がりました!途中、寒気や突然現れたり消えたりの描写があるので、怖いかも?と思い、一応ホラーにしました。儚さもありますね。読んでくださりありがとうございました! (2019年7月23日 23時) (レス) id: 11b0ce94e5 (このIDを非表示/違反報告)
そまそまりつりつ(プロフ) - 解説を読む進める度に「はぁ…」と納得のため息を漏らし過ぎて親にうるさいと言われましたw俺個人の意見ですがホラーと言うより、儚い物語のようにも思えました。とても面白かったです。 (2019年6月28日 23時) (レス) id: 179de70c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2018年8月3日 12時

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