第十三話「月」 ページ13
ベッドの上で何回かの夜を過ごした。
こんな経験は初めてで、自分の事ながら笑ってしまう。
「……」
と言っても、声は…いや、この場合は音と言った方が正しいか。
音は響かないのだが。
窓の外を眺めると、月が見えた。
黄色く明るい月。
『…月が綺麗ですね』
『来て早々告白?』
ハッとして振り返った。
冷たい空気を連れて、彼女が来た。
だから、音が戻った。
『部屋から出られたのですね』
『前は出られなかった。でも、出れるようになったみたい』
悲しそうな目だ。
彼女のせいじゃない。
これは俺が勝手にした事だから。
『私に嘘をつくなんて酷いわね』
『あなただって散々私に嘘をついてきたじゃないですか』
嘘、というより隠し事か。
『幻太郎、私もあなたの事が好きよ。初めて見た時から、友人に面白い話を聞かせるあなたが気になっていたの』
『廊下での会話でも聞いていたんですか』
『そんな所ね。それで、私もあんな風になりたいって思ってしまった。私は最後、楽しくお喋りも出来なかったから』
恐らく兄の話だろう。
兄の話になる時、彼女はいつも同じ目をする。
『そんな私の心が、あなたを呼んでしまった』
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黒羽ひみと(プロフ) - いじいじさん» 初めまして!神です!(嘘ですよ) 読んでいただきありがとうございます♪ (2020年10月5日 1時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
いじいじ - えぇ…神ぃ……? (2020年10月1日 12時) (レス) id: 071f62e8cb (このIDを非表示/違反報告)
そまそまりつりつ(プロフ) - 黒羽ひみとさん» まじですか?あの駄作を…神ですね。こちらこそこんな素敵な小説を読ませて戴いてありがとうございます (2019年7月23日 23時) (レス) id: 179de70c1e (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - そまそまりつりつさん» コメントありがとうございます!そまそまりつりつさんの作品最近見たので、テンション上がりました!途中、寒気や突然現れたり消えたりの描写があるので、怖いかも?と思い、一応ホラーにしました。儚さもありますね。読んでくださりありがとうございました! (2019年7月23日 23時) (レス) id: 11b0ce94e5 (このIDを非表示/違反報告)
そまそまりつりつ(プロフ) - 解説を読む進める度に「はぁ…」と納得のため息を漏らし過ぎて親にうるさいと言われましたw俺個人の意見ですがホラーと言うより、儚い物語のようにも思えました。とても面白かったです。 (2019年6月28日 23時) (レス) id: 179de70c1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2018年8月3日 12時