【刀剣乱舞】その審神者、仕事中毒により。

36.心の余裕 ページ36

主が死んで、俺たちには心の余裕ができた。恨み辛みを抱ける時間を持ってしまった。

蓄積された不平不満がいまになって溢れ出す。


「つか怪我はどうすんだよ、一生治せねぇじゃねぇか。アイツを殺したせいで国広が死んだらぜってぇ許さねぇぞ」

「短刀は今にも死にそうだというのに……なんでこんなときに」

「生きていたからといって、手入れをしてくれるとは思えんがな……」

「……誰が殺したんだ」


俺もつい零した。

なんでもこなすという言葉に、本当になんでも命令してきた主を思い出して。

なにも考えず、なにも望まない。織田信長のことすら考えなくなっていたというのに、死んで心が掻き乱される。

こんな感情は気持ちが悪い。

どうせ死ぬのなら、俺も連れていってくれればよかったものを。こういう時だけ一人で逝ってしまうのか。


「……ここで考えゆうても仕方ないぜよ。確か審神者には引き継ぎっちゅうもんがあったはずじゃ。政府に全部正直に話してどうにか……」

「政府も信用ならねぇからこうなってんじゃねぇのかよ」


場を前向きにしようと声を出したのは陸奥守吉行だ。いままでも俺たちが暗くなる度、そうしていた。

だが今回は事が違う。

簡単に片付けられる話でもなかった。

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