【刀剣乱舞】その審神者、仕事中毒により。

35.主の死 ページ35

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世界が揺らぐ瞬間を、俺は一度経験したことがある。

……主が死んだときだ。


絶対に死なない男だと思った。

いつでも誰かに首を狙われていそうな男だが、それでもやはり死ぬことはないのだと。

この男を本気で殺せるやつなんて、この本丸には存在しない。主を平気で殺せるやつがいたら、そもそも付喪神として生まれていないだろう。


だが主は死んでいた。

心臓は止まって、呼吸もしていない。脈も動かない。

もう二度と命令が降りることはなくなった。


「……主を殺した者がいるなら、正直に教えてくれないかな」


審神者部屋から出て、大広間に集まった俺たちに燭台切が一番に聞いた。

俺たち一同は全員口を閉ざした。

誰も彼もが怪しく見える。


「んなこたどうだっていいだろ。それよりこれからどうすんだよ」

「どうだって？どうだっていいってなに……これで俺たち、もう二度と主に愛されなくなったんだよ」

「生きていても二度と愛されませんよ。ようやく死んでいただけて晴れ晴れした気分ですな」

「人が一人死んで晴れ晴れか……」

「おや、これは意外だね。大倶利伽羅はあの男に対して嫌悪感はないと？」

「確かに酷い男だったけど、死んでほしいとまでは僕も思ってなかったよ」

「ねぇ、僕たちこれからどうなるの。主を殺したなんて知れたら、刀解になったりしない……？」


俺たちの中で不安が渦を巻いた。

主がいたとき、ほとんど思考を放棄していた者は特に混乱した。なにをどうしたらいいかわからない。

政府に連絡を入れるのが一般的だが、俺たち全員それを理解していたが、誰ひとりとしてそれを行おうとは思わなかった。

ただただ精神的に追い詰められた。

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