17.朝日 ページ17
すっかり熟睡していた。霊力を放出している間に、気絶する形で眠ってしまったらしい。
久しぶりに審神者の力を使って、身体と心も追い付けなかったのか、涙の跡を拭うのに時間がかかった。
昨日までは雲が覆っていた空に、今日は朝日が照っている。城の改善はかなり上手くいったようだ。御殿の壁や床も綺麗になっている。
気になることといえば、朝起きた時に三日月がいなかったことだろう。
てっきり朝まで監視しているものと思っていたが、私が寝たのを確認して自分の寝床に戻ったのかもしれない。
睡眠は体力の温存のためには必要なことだ。だからそれならそれでいいのだが……。
「よっ。元気かい?」
「……またあなたですか。姿の見えぬ方」
今日は先に気配に気付いたため、特に驚きはしなかった。
朝の準備体操をしながら返事を返す。
「昨夜はまた随分と面白いことをしてくれたな。短刀の怪我が治ったと、粟田口部屋が騒がしかったぜ」
「そうですか。ならよかったですね」
本丸で重傷者が一つの部屋に集まっていることは知っていた。が、まさか粟田口の短刀とは。
ノートに書かれていた、刀装を付けない出陣方法が事実なのだとわかる。
姿の見えぬ方は、くつくつと楽しそうに笑った。
「だがその無茶のせいで悪夢を見ていたな。宗近、って誰だい?」
深呼吸のため上げた手が止まる。
後ろを振り返ったがやつはいない。
仕方なく空を睨み付けた。
「……別に誰でもありません」
「三日月宗近。宗近と聞いて俺にはその刀しか浮かばん。恋人だったのかい?」
「なぜそういった考えに至るのか理解し難いのですが……あなたこそ、どうして姿を現さないんです」
話題を変えるため、昨日からの疑問を問い質す。
姿を見せないくせに、やけに親しげに関わってくるその刀が不思議だった。
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黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます!更新は今しばらくお待ちくださいませ! (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません!時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます!更新待ってます!! (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2020年8月23日 12時