15.金色の雨 ページ15
内に炎を滾らせているのはなにもあなただけじゃない。私だって、油をかければ燃える火花があるというのに。
「わかりました。それでは私は就寝としますので、おやすみなさい」
火には油ではなく水をかけろ。取り合っていてはそれこそ時間を浪費する。
いまはただ、早め早めにこの本丸の再生活動に勤しまなくてはならなかった。
三日月の横を通り過ぎ、新しく敷き直した布団に寝転がった。掛け布団を頭の上まで上げて、視界を真っ暗にする。瞼を閉じて意識を集中させた。
――これより、霊力の放出を始める。
✿
温かさを感じ視線を上げた。
空中に白い靄が浮かび、所々で金色の光が煌いている。光は部屋の外にも広がっているようで、気付けば立ち上がり部屋を退室していた。
御殿を出て外を見渡すと、本丸、二の丸、三の丸全てを包み込むように金色の光が立ち込み、幻想的な風景を作り出している。
そこで初めて、それが審神者の力だと気付いた。
審神者の活動が長くなれば付喪神といる時間も増え、次第に霊力が増していくというが。
これはもはや、付喪神からの守護を受けていると言われても不思議ではない霊力だ。
――あなた方、刀剣がいなければ歴史は守れません。
一体あの者はどれほどの付喪神と関わってきたのだろうか。触れて来たのだろうか。
身体に触れる金色は優しく温かい。
だが少し、悲しさを滲ませている。
――涙だ。
その光は、涙の雫のように見えた。
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黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます!更新は今しばらくお待ちくださいませ! (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません!時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます!更新待ってます!! (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2020年8月23日 12時