45.懺悔 ページ45
布団の下に隠されていた刀剣が脳裏に過ぎった。
やはり、あの刀はあなただったか。
いや、"あなたはあの刀だった"。という方が、正しいかもしれない。
刀を目にしたときからそれはわかっていた。
「……何故そんな無意味なことを。それに、主を殺したのはその男がブラックさに……」
「それでも、殺したらいけなかったんだ」
壁を引っ掻くような音が聞こえた。
「恐らく気付いているだろうが、この本丸は壊れている。外面的にも、内面的にもな」
「そうですね」
「壊したのは俺なんだ」
「壊したのは前任でしょう」
「あいつは歪めただけだ。確かに酷かったぜ。それは否定しない。だが俺は……俺が、壊したと、そう思っている。少なくとも、この本丸の在り方を壊したのは俺だ」
懺悔を告白するように捲し立てる。
「主を憎んで、主の寝首をかきたいと願いながら主に仕える。それで安定していたんだ。 例え短刀が何振り折れようと」
返事や反論は喉の奥に引っ込めて、今はただ静かに耳を傾ける。
今私の心は不安定だが、彼の心も不安定みたいだ。
「……主が死んで、結束は崩れた。だからこの本丸は壊したのは俺で、俺はき……審神者に、あいつらを元通りにしてもらいたいんだ。幸せにしてやってくれ」
後半部分は、掠れていて聞こえづらかった。だが彼がなにを願っているのかはわかる。
忙しない呼吸音と、恐らく多いだろう心拍数。
人間が憎くて、嫌いで、殺したくて堪らないのに、彼は仲間のため私を置くことにした。
本丸を元に戻すため、人間を置くことに決めたんだ。
そして私が今もなお生きてここに置いてもらえるのは、恐らく彼が私を認めたからなんだろう。
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黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます!更新は今しばらくお待ちくださいませ! (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません!時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます!更新待ってます!! (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2020年8月23日 12時