23.長兄一期一振 ページ23
しかし新しい審神者か。
なぜ突然、三日月殿は審神者を受け入れたのだろう。
引き継ぎのため来た審神者は追い出す。というのは、三日月殿が一番に立候補し、私が乗り、他のみんなも納得し始めたことだ。
それを覆すように昨日「審神者を置くことにした」と一人一人に報告しにきた。
独断専行にもほどがある。しかも、反対意見は通らず、納得のいかぬ者は上手く言いくるめられた。
私もそのひとり。
昨日の審神者の霊力、確かに温かなものだったが、咽び泣くような悲しみと微かな炎の香りがした。
豊臣のところで燃えた記憶が疼いた。
この本丸に来て、前任のことばかりで忘れて掛けていた炎の記憶を。
「どんな人間なんだろうか……」
「あ、いち兄も気になる?実は俺も気になってるんだよね」
「気になるとは?」
「そりゃもちろん新しい審神者だろ」
「僕も、気になります。虎くんたちの怪我も治っていたので……お礼が言いたい、です」
控えめながらもそう主張する五虎退の頭を撫でる。
確かにこれほどの怪我を治していただいた礼はすべきだろう。
借りを作ることに関しても不安だ。早急になにかお返しをして、跡が残らないようにしたい。
「私が言ってくるよ。だから皆はまだ安静にしていなさい」
「だがいち兄はまだ怪我が残っている」
「なら直接見てもらいましょうよ!そしたらいち兄の怪我も治りますよね?」
「確かにそれはいいかもしれません」
前任の苦行をあまり見ていない五虎退、前田、秋田は昨日来た審神者に対して前向きな気持ちを持っている。
だからこそ、私が警戒しなくてはならない。
好奇心に駆られて会いに行ってしまう前に、まずは私が視察に行かないと……。
自身の本体を握り締め、立ち上がる。
もしも弟を任せられる御仁でなければ、その時は今度こそ私が切る。
三日月殿には……
――あのような甘い御方に任せるわけにはいかない。
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黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます!更新は今しばらくお待ちくださいませ! (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません!時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます!更新待ってます!! (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒羽ひみと | 作成日時:2020年8月23日 12時