番外編 傍観者の免罪符 ページ30
今日は女バスと男バスで体育館を分けて使う日。
少し窮屈だけれど、そこまで広い学校ではないから仕方ない。
なんていつもと変わらないことを考えていた。
「佐藤いますか」
持っていたボールが俺を嘲笑うかのようにして手から零れ落ちる。
声のほうを向くと、案の定思っていた通り彼奴で
てか仁王立ちってなんだよ、道場破りですかお前。
「あ、A」
名前を呼ぼうと手を伸ばしたその瞬間。
人殺しなんて言葉が聞こえて俺の真横からボールが飛んで行った。
まだ準備中で体育館の真ん中を区切るネットも付けられていない空間を切り裂くように硬いボールが飛んでいく。
そして硬い音を立てながら彼女の顔に当たって転がった。
「え? お前なに、どうしたっ? 」
いきなりの事でまだ止まっている思考回路を回して、考える。
人殺し
たった今聞こえた単語。
Aが危ない。
わかっていても俺の体は動かなくて
彼奴もボールの雨の中、防御もするわけでもなく突っ立っていた。
傘もないのに、土砂降りの雨の中、ひとりぼっち。
目を背けたくなるような光景から目が離せない。
だって彼奴が俺の事を見て笑ったから。
「久しぶり」
挨拶をするような軽いノリで
佐藤が来てやっと止まったボール。
永瀬がへたり込んでしまったのを見てやっと体が動くようになった。
佐藤とその後ろにいたチビちゃんに手伝ってもらい、彼女を前に抱き抱える。
痣のできてしまった目を開けて、あいつは俺を見た。
「ごめん、ごめんなっ、俺いつもあんなんでっ」
「・・・大丈夫だって、◯◯、・・・ありがと 」
笑顔で名前を呼ばれたその時、俺は許してもらえたんだと思えた。
てかこいつ、最初から怒ってなんかいなかったんじゃないか。
違かったとしても、お前はそんな奴だから勝手にそう思う事にするよ。
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おかか - 及川さんのところ泣いちゃいましたすごく素敵な作品でした!!ありがとうございました!!!! (2020年7月12日 19時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - あるふぁ@猫さん» ありがとうございます!頑張らせていただきます。 (2016年5月13日 23時) (レス) id: 9503c33a3e (このIDを非表示/違反報告)
あるふぁ@猫(プロフ) - 泣きました(´;ω;`)すごくいい話ですね!更新頑張ってください! (2016年5月12日 20時) (レス) id: 7a1a6ed2e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - ミケ猫さん» ありがとうございます!(*゚▽゚)ノ (2016年3月18日 19時) (レス) id: 9503c33a3e (このIDを非表示/違反報告)
ミケ猫(プロフ) - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2016年3月2日 20時) (レス) id: b22aec6e7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すいか | 作成日時:2015年8月22日 13時