目が行く話

逃げられない 2 ページ25

買いだめしていた食料が無くなった為、数ヶ月ぶりに外に出た
定期的に外に出て買い込んでまた引き篭るといった生活を続けて早２年

一緒に暮らしているAは以前『外に出して』と毎日の様に泣いていたが今はそれも落ち着き、オレとの暮らしを楽しんでいる…と思っていた

いつもなら玄関を開けたあたりで自室から彼女の声が聞こえてくるのだが、何故か今日はない
…嫌な予感がした

シ｢A！？！｣

バンッ！と大きな音を立て思いっきり扉を開けるとその部屋は無人
部屋が荒れた様子はない
という事は逃げたのか？Aが？何で？

…こんな時のためにGPSを付けておいて正解だった。全く、心配させやがって
外に出るなとあれ程言い聞かせてたのに
外はゴミだらけだ。あんな汚くて、醜い世界に触れさせる訳にはいかない

あぁ、早く連れ戻さなければ

＊

アプリで確認しながらAがいるであろう場所に着いた咲は最寄り駅
そこまで大きくない駅の為、案外すぐに見つかった

見つかったのはいい。見つかったのはいいがあの隣にいる男は誰だ
何で手を繋いでいるんだよ。A嫌がってるじゃねぇか

…もしかしてアイツが部屋から連れ出したのか？
そうだ。そうに違いない。あの男がAの事を唆したのだ

シ｢人の彼女に何手ぇ出してんだよ、アンタ｣

ぐいっとこちらへ引き寄せ背中へと隠す

男｢なんだ、彼氏いたのかよ｣
シ｢よくもまぁ勝手に連れ出してくれたな｣
男｢連れ出した？んだそれ｣
シ｢とぼけるな｣

怒りがふつふつと湧き上がる
なんでこんなヘラヘラしてやがるんだ
ぶん殴られてぇのかよ

男｢あ〜なんか萎えたわ。んじゃ｣

ガシガシと頭を掻きむしりその場を去っていく知らない男
その後ろ姿が見えなくなるまでオレは睨み続け、すぐオレは後ろへ振り返りAと目を合わせる

シ｢さっきの男、誰｣
貴方｢し、知らない、人｣
シ｢じゃなんで手なんか繋いでたんだよ｣
貴方｢か、勝手に繋がれて…｣
シ｢なんでされるがままなんだよ｣
貴方｢こ、怖くて、何も言えなくて、｣

あぁ、こんなに震えて。可哀想に
だから外には出たらダメだとあれだけ言ったのに

シ｢外に出たらダメだって言ったよな？｣
貴方｢！ご、ごめんなさ、｣
シ｢オレが来たからよかったけど。あのままだったらどうなってたか分かんねぇぞ｣
貴方｢もう、出ない、出ないから｣

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