脇目も振らない話 (ページ19)

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初恋 4 ページ19

シンタローの口からアヤノちゃんの名前が出るだけで辛い
こんな事なら好きにならなければ
2人と仲良くならなければ
あの時、一緒にクラスに行かなければよかった

こんなに辛い思いなんてしなくてもよかったのに

シ｢…用事ないなら一緒に帰ろうぜ｣
貴方｢え？いや、でも｣

『早くしろ』と急かしてくる
おいおい勝手に教材をしまうんじゃない！

シ｢さっさとしないと置いてくぞ｣

そう言い残し、私の鞄を持つとそのまま教室を出て行く
私に拒否権ないのか。鞄を持ち出されてしまったら一緒に帰るしかないじゃんか

大きな溜息をつき私は立ち上がる

貴方｢ちょっと待って｣

小走りで後を追う
体育壊滅的なくせに歩くの早いな

貴方｢ねぇ、待ってって！鞄帰して｣

シンタローに追いつき、鞄を引っ張るが返してくれない

シ｢あのさ。勘違いだったら全然いいんだけど｣

こちらを振り返る事も歩くスピードも落とす事もなく話し始める

シ｢…アヤノの事、恋愛的に好きじゃねぇよ｣

ボソッと呟くように。でも、ハッキリ聞こえた
"恋愛的に好きじゃない"確かに、そう言った

もしかして幻聴？私そろそろヤバい？
それとも夢？実は課題やってる途中寝落ちして〜とかだったり？

脳内パニックで頭が回らない
とりあえず頬を軽く引っ張ってみる
普通に痛い。夢ではないようだ

シ｢ちなみに夢でも幻聴でもないからな｣
貴方｢え、怖。エスパー？超能力？っていだ！？｣

ちょっとふざけただけじゃん。何でデコピンされなきゃいけないのだ。理不尽極まりない

シ｢もっと他にねぇのかよ…ったく。オレが恥かいただけじゃねぇか｣

口元を抑えるその顔は赤かった
鼻から下を手で隠しているが、それでも分かるくらい

貴方｢え｣

何それ。それじゃまるで私の事…
その瞬間私の腕が引っ張られた
一気に距離が縮まり
その距離0cm

ふに、と頬に何か柔らかい物が触れる
それが唇だと理解するのに数秒はかかった

シ｢そういうこと｣

手に持っていた私の鞄を乱雑に押し返すと逃げるようにその場を去る
廊下に取り残された私は放心状態だった

何が起きた。何が起こった？
キス？へ？
急激に力が抜け、その場に座り込む

頬に手を当てる
その頬はまだ熱かった

そ、そういうこと…ってつまり、その、そういうことだよね！？！

明日どんな顔をして会えばいいんだろう
いや、ていうかまず普通あんなことしておいて私置き去りにする！？

貴方｢問い詰めてやる！｣

＊

その後彼女へと昇進したのはまた別の話