無限の未来 15th season (ページ33)

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733話ページ33

【大我】

桃「お疲れ。よかったよ、A」

ソロを終えて、裏にはけたAは、小さくうずくまって、一人泣いていた。

今日は高校の同期の子たちも見に来てくれていて、歌の前には、これまでの2年近くのことも話し、色々と込み上げるものがあったんだとは思う。

落ちサビぐらいからかな。

明らかにAの声は震えていて、掠れて、彼女には珍しく、音が当たらなかったんだ。

「っ、ﾌｯ…ﾊｧｯ」

桃「ん。大丈夫大丈夫。上手だよ…」

「ｸﾞｽｯ…ﾝﾊｯ…」

桃「そうそう。ゆーっくり、ゆっくりね。不安だったね…怖かったね…(ﾄﾝﾄﾝ)」

自分のことを話すのが苦手だったAが、ファンの子達の前で、自分のことを、病気のことを話すこと。

表に出ていることだけじゃなくて、あくまでも“噂”としてしか出回っていないことを、自ら話すこと。

受け入れてもらえるかどうかも分からないその事実を口にすることが、Aにとって、どれだけ怖かったか…。

黄「あら、泣いてるの？」

桃「不安だったんだよなぁ～」

黄「A、カッコよかったよ。よく頑張ったな…。ほら、落ち着け…ん。樹、もうすぐ来っから。先に着替えときな？」

まだ息は上がっているけど、高地の呼びかけに頷き、ゆっくりと次の衣装へと着替え始めるA。

時々、溢れる涙を拭って、グッと天を見上げているけど、自分なりに切り替えようとしている姿は、いつもより頼もしかった。

青「さんきゅっ」

桃「おぉ、樹！お疲れ。…A、泣いてたの知ってる？」

青「ん？あぁ…安井くん、来てたんだ。不安なのもあったと思うし、込み上げたんだと思う」

ササッと着替えて、衣装ラックの側で小さくなるAの背中をゆっくりさする樹。

俺もその隣へ行けば、まだポロポロと涙が流れてくるA。

青「大丈夫。もう、怖くないっしょ？ずっと泣いてたら、苦しくなるよ…そうそう」

桃「安井くん、いたんだって？…最後くらい、笑わせてあげよ？」

2人でそう声を掛ければ、ゴシゴシと涙を拭って、Aはゆっくり立ち上がった。

目、擦らないの！って他のメンバーに言われ、彼女は少し笑って、ステージへと歩き出した。