506話 ページ6
【高地】
長かった。本当に長かった…。
東京公演、地方でのライブ、そして大阪公演。
黄「やりきった…」
自信を持って、去年よりもさらにいいものが作れたって、そう思ってる。
そのための準備だってしたし、途中何度も…ぶつかっては苦しんで、その度に進んだ。
Aも、治療と並行しながら、決して順調な道のりではなかったけど、ここまで全71公演、一度も欠けることなく、無事に千穐楽を迎えることができた。
黄「泣きすぎ…っ、ははっ」
「だっ、だってぇ…っ」
黄「本当は、しんどかったよな…」
「んっ…でもっ…楽しかったぁ。舞台もっ、ｸﾞｽｯ…みんなと…ｯ毎日」
もう、3年目を迎えた俺たちの少年たち。
まだトラウマの残る中、Aが一歩踏み出して舞台に臨んだ初年度。
反抗期も重なって、それでも期待に応えられないことが悔しくて、何度も無茶をして…。
俺らも素直になれなくて、まだぶつかることしか方法を知らなくて、正面から衝突をしながらも、根性を見せてくるAに何度も驚かされた。
2年目、Aが表に出ることはなかった。
自分のもどかしさと、悔しさを、後輩にぶつけてしまったことだってあった。
でもそれは、それだけAが本気で、この少年たちという舞台に賭けていたから。
どれほどの想いを持って、復活した少年たちの舞台に立って、トラウマを乗り越えて臨んだか。
あの時聞いた、Aの想いは一生…大切にしてやりたい。
「また行こうな、テーマパーク」
黄「そこっ！？」
「冗談…。また…創ろうね、高地」
黄「ん。もう、大丈夫だからな」
あの日、初めてAが倒れたあの日、あの場所を、きっと俺らもAも一生忘れることはない。
きっとAは、これからも俺らの思いもしないような無理だってしなきゃいけない時がくる。
その度に、またぶつかることだって、あるかもしれない。
でも、俺の中の強い思いは、この7人で進んでいくこと。
それは一生、守りたいんだ。
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年12月15日 20時
