無限の未来 4th season (ページ21)

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171話ページ21

【佐野】

佐野「あと…1週間…。っしゃ、やるか、やるか。やるしかないからな…！」

「はい、佐野。おにぎり」

佐野「…サンキュ」

「大丈夫やで。なんか珍しく自分に気合い入れとんなぁ、あら佐野くん変わったなぁ、なんて思ってへんから」

佐野「めっちゃ聞いてるじゃん」

「聞いてへんとは言うてない。“変わったなぁ”とは思ってへんだけやから」

屁理屈だらけで、普段とは違う気合の入れ方をする俺に、クスクス笑いながらも背中を押してくれるA。

前向いてくれて、よかった。

そう…俺も、Aも、みんなも。

いつもと、何も変わらない。

目の前の野球に必死になって、ほんの休憩にはみんなでくだらねぇ話して。

でも、ほんの少し前まで、当たり前じゃなかった“全員揃う”ということ。

なにも考えず、ただ前を向けるってこと。

佐野「あ、そうだ。お前、治療再開すんだろ？合宿終わったら。…いつ入院すんの？」

「んー…ひとまず、合宿終わったら兵庫帰るし…。まずは一旦、年明けから一週間。それで何もなければ、私が望んだ通り、通院でやってみることできるかなって感じ」

佐野「そ」

「え？それだけ？」

佐野「ん？そんだけ。…治るといいな」

「…え、あ…うん」

俺なりの精一杯の励ましだったのに、キョトンとして俺を見てくるAの視線に、恥ずかしくなってグラウンドへ駆け出す。

怪我でメンバーがしばらく練習を外れた時、大好きな先輩たちが引退して、少しだけ寮が静かになった時。

いつだって、自分のことじゃないくせに、それでも一番悔しがるのは、寂しがるのはAだった。

怪我をしたメンバーが帰ってきた時、新入生が入って部員が増えた時。

誰よりも喜んで、楽しんでいるのも、Aだった。

佐野「お前が居なくなったら…いやなんだよ」

空に吸い込まれる、俺のつぶやき。

18人で引退する。

1年の頃からの、変わらぬ俺らの約束だった。

その約束は、一度Aを失いかけてからも変わらず、だからこそ、さらに強く、固い約束となっている。

「佐野…？」

佐野「…ん？」

「83代は、18人やから…。17人と、マネージャー…ちゃうから」

いつのまにか俺のそばにいたAの言葉は、まっすぐ、透き通ってた。

彼女はいつだって…強く、たくましかった。