無限の未来 4th season (ページ19)

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169話ページ19

【片寄】

結局その日はなんとか同期で説得をしながら、Aの希望も聞きながらだけど、Aは一日練習を休んだ。

でも、そうして思い切って練習を休んだおかげなのか、不安定だった体調は少し落ち着いたみたいで、夕食の時には食堂に顔も出せるくらいにはなっていた。

ただ、やっぱり悔しくて結構泣いたのか、目は少し腫れてたけど、それには気づかないフリをした。

気づかないふりができるくらい、Aはどこかスッキリした顔をしているように思えたから。

「明日は、いくからね…」

片寄「うん、待ってる。また、もう一回仕切り直して頑張らんとな」

「うん。…頑張る」

それだけの会話だったけど、心なしかすっきりして笑っているAの表情に見えた、悔しさと抱き合わせの前向きさが、嬉しかった。

一年前、どこに居るべきなのか、なにを追い求めるべきなのか…アイドルだった自分と、今の自分との狭間で、自分の居場所に戸惑っていたA。

今はそんなこと、みじんも感じさせない。

治療を中断してまでも、なにが正解かはわからなくても、とにかく今は、ここに戻ってきたいと思ってくれたこと。

ただでさえ地獄と言われていた冬合宿を、俺たちと一緒に戦い抜こうとしてくれたことが、たった1日参加できなかったことを、泣くほど悔しがってくれたことが、俺は純粋に嬉しかった。

「片寄…。あのさ…私、さ…。この合宿が終わったら、もう一回、ちゃんと治療…受けようと思う」

片寄「えっ？」

「でも、通院で治療、できないか…相談だけはしてみる」

片寄「…通院で、治療」

「調べたんよ。練習、お休みして。なんか、こんなに…グラウンドにおること、生きがいなんやな…って。離れなくても、頑張れる方法…探してん」

片寄「治療、するって…そう、決めたんやな」

「ん…。夏まで、生きられなかったら、意味ないから。ううん…5年後も、10年後も、ここにいるみんなと…バカできなきゃ、なんの意味がないから」

“命なきゃ、なんもできん”

俺ら2人の会話は、いつの間にか近くのテーブルにいた2年生全員が聴いてた。

数原はニヤリと笑っていて、珍しく佐野は、Aの言葉に涙を流していた。

冬を一緒に戦ってくれたマネージャーのために、俺らはいくらだって背中も押すし、一緒に戦うんだ。