【174】JURI ページ24
樹「母ちゃん」
『あれっ。どうしたの？』
樹「いや。…はい、クリスマスプレゼント」
風磨がいた頃は、毎年2人でお金出し合って母ちゃんに贈ってたクリスマスプレゼント。
あれから数年は渡せてなかったけど、今年はなんとなく。
母ちゃんも、わざわざ入院中の病院まで来てこんなクリスマスプレゼントなんて渡されるとは思わなかったのか、ちょっと驚いてて。
照れくさいから、ここで開けないで〜なんてふざけて小さなその箱を背中に隠してみたり。
『樹』
樹「ん？なに？」
『楽しそうで、よかったよ』
樹「…そう？」
『うん。楽しそう。ふふっ…ね、兄ちゃん楽しそうだよねぇ〜。ん、触ってごらんよ』
嬉しそうにお腹ん中に向けて話しかける母ちゃんにそう言われて、そこに手を当ててみれば、ポコンと手に伝わる初めての感触。
“樹は末っ子だったから、初めてだもんね”って笑う母ちゃん。
俺が生まれる時も、こんな風に楽しそうに笑ってくれてたのかなって思ったらちょっと嬉しくて、なんかよく分かんないけど、急に心があったかくなった。
『樹？あんたもさ。いつかこうやって、大切な存在が…ひとつ、またひとつって増えんだからね』
樹「…んだね」
『守りたいものってのは、入れ替わりじゃない。増えていくもんなの。ね？』
樹「分かってる、大丈夫」
母ちゃんが何を伝えたいかは、ちゃんと分かってる。
風磨も、俺も、これから生まれてくるこのおチビも、全部全部、同じように母ちゃんの守りたいもので、変わりないってこと。
大丈夫、もうちゃんと分かってるから。
『Aのとこ、顔だけ出してあげなね』
樹「あぁ〜…もう帰って来てんだ」
『大丈夫。Aも、楽しそうだったよ。翔太と北斗と帰って来て、こっちにも顔出してくれた。しばらく病院で過ごして、2人は帰った』
樹「ふーん、そっか。ん、寄って帰るわ」
帰り際、母ちゃんから呼び止められて振り向けば、ぽふっと投げられた小包。
不器用な…“父さん”の文字で書かれた“Merry Xmas”。
たったそれだけの文字に、じわっと視界が滲んだ。
帰ったら、ありがとうって言おう。
「あ！樹っ！」
樹「体疲れてんのにはしゃぐな」
「も〜…お兄と同じこと言う」
そばにいられたら、それでいいなんて…嘘だけど、ホントだよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 453人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2022年4月18日 12時
