いつも僕らは-4- (ページ14)

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【164】SHOTA ページ14

翔太「んじゃ、お兄帰るよ。着替えここに全部入れておいたから。一週間分あるし、ランドリー行かずに使ったらまとめておいて？」

「んー、わかったぁ。ありがとう〜」

そう言って、最近買ってやったタブレットから目を離さずに言うA。

なんだかそっけなくて寂しい感じもするけど、正直Aにとっては一週間くらいの入院なんて、慣れたもんなんだろう。

決して1ミリたりとも嬉しいことじゃないけど。

河合「翔太、帰る？」

翔太「あー、はい！あとよろしくお願いします。何かあったら、ケータイはいつでも出られるんで」

河合「オッケー。3日後の13:00結果見て服薬調整して、それから何回か病院で試してみて、大丈夫そうならそこから年明けまでは家で頑張ってみて」

翔太「ありがとうございます、先生」

なんとかAの希望通りに家で年末年始が過ごせるように、綿密な作戦を練ってくれた河合先生には本当に感謝しかなくて。

Aも少しずつ思春期らしくなって、これまでよりは少しそっけなさもあれど、心ではちゃんと今回のことはありがたく受け止めているんだろう。

嬉しそうに河合先生が、これAからもらったわ〜って見せてきた小さなメッセージカードと、キラッと光ったタイピンを見て思う。

河合「バイトしてたらもうちょっといいの買えたのにって口尖らせてたわ」

翔太「あぁ〜、もう…ほんと生意気ですんません…」

河合「ハハッ。いいの、いいの。…きっと、他にもたくさん“やりたい”って思ってること沢山あんだろうな。ひとつでも多く叶えられるようにすんのが、俺の仕事だから」

社会勉強にもなるだろうし、学生の間にバイトできるくらい体調も心も落ち着く時が来たらいいな、なんて2人で話しながら、広がるのは夢だった。

中学2年でAが限界を超えて壊れてしまったあの日から、必死に妹を守らなきゃ、助けなきゃって必死になっていたこの3年間。

Aのことで、こんなに前向きに未来を見られるようになったのは、俺も初めてだったかもしれない。

産婦人科で入院している母ちゃんのお見舞いに連れてきた樹を拾うついでに俺も病室に顔を出せば、安心したような顔で、“翔太、いい顔してんじゃん”って。

もちろんまだ何が解決したわけではないんだろうけど、それでも嬉しかった。