DATE2 ページ3
少しずつ、体から抜け落ちていた感覚が戻ってくるのがわかる。
左半身にかけて、じんわりと冷たく、硬い感触を感じる。
どうやら私はどこかに寝そべっている体制なのだと判別した。
目をゆっくりと開けると、気持ち赤の強い蛍光灯の光が差し込んできた。
上半身を起こし、額に手を当て柄にもない唸り声をあげる。
A
「う”っ………ここ、は…」
見渡すと、その景色は私の記憶媒体にはない光景だった。
徐々によみがえる先ほどの記憶に、私は底知れぬ恐怖を覚えながら辺りを見渡す。
石畳の床にコンクリートの壁、簡素なテーブルに置かれた紙切れと天井の蛍光灯…
それから……そこにいた人物に、私は声を張り上げ心底驚いた。
A
「トクっ！？」
未だ意識が戻らないのか、床に突っ伏したままの親友の肩を一生懸命に揺する。
親友がいることが不安感を少し緩和させ、逆に別の不安を募らせる。
何度も名前を呼びながら、涙声になりながら、そうしていると、トクは眉をひそめ顔を歪ませた。
トク
「ん”ん”………は、え、A？」
A
「よ、良かった、とりあえず意識が戻って…」
私の姿を認識するとトクは平たい目を見開き、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
私はというと、喋り、動き、存在がはっきりとした親友がいることにひどく安心感を覚えていた。
しかしその後に、ここが見知らぬ場所であること、トクの身も危機的状況下にあることを理解し、形容しがたい罪悪感をも覚えた。
A
「ねぇ、トク。ここ知ってる？」
トク
「残念だけど覚えがないよ……んぉ？」
一応トクにも聞いてみるが、彼女にもわからないようだ。
会話の後、なにかを辿るようにトクが歩いていく。
私もそれに続くと、テーブルに置かれたタブレット端末が振動しているのを見つけた。
トク
「……何だろう、これ」
A
「さぁ……」
トクが警戒しながらも、未だ振動を続けるタブレット端末に手を伸ばす。
しかし、どうやら机に固定されているようで、手に取ることは出来なかった。
この殺風景で見たことのない部屋、固定されたタブレット端末、仮にも女子校生が二人……
私達は、ただ帰っていただけなのに……未だに信じたくない自分がいる。
しかし否応なしに考えてしまう、今から起こりうる最悪の事態を。
『＿＿＿音声案内を開始致します』
トクが端末の電源をオンにすると同時に、機械的で抑揚のない、無機質な音声が狭い室内に響いた。
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