あの日、私は ページ4
Aside
彼と出会ったのは、今から5年前。
空が綺麗な暖かい春の日だった。
転入先の学校へ向かう途中、迷ってしまった私はどうしようもなくなって、近くにあった公園に入った。
「…お前、何してんだ?」
桜の木の下で花びらを捕まえようと飛び跳ねていると背後から男の子の声。
驚いて振り返ると、私が行く学校の制服。
「…え、っと…。学校に行こうと思ってたんですけど…迷っちゃって…。諦めて遊んでた、とこ…かな…?」
あはは、と乾いた笑いをこぼす私に彼は吹き出した。
どうやらツボに入ったらしく、爆笑している。
「何だよ、お前。たかが学校行くのに迷ったのかよ!ヤベーだろ、それ!」
何がツボに入ったのかは分からないが、笑われるのは嬉しくない。
「そんなに笑わなくてもいいでしょ!てか、私、転入生なんです!学校の場所なんてそんなすぐ覚えられないし!」
ふん、とそっぽを向くと彼は涙を拭いながら聞いてくる。
涙出るまで笑ったのかよ。失礼な奴。
「へぇ…お前転入生なんだ?どこ中?何年?」
そっか、制服違うから分からないか。
制服が同じでは、と不思議に思って自分の制服は前の学校のままだったことに気づく。
「2年です、**中に転入するの。クラスは知らないですけど。貴方は?」
「俺も**中の2年。山田一郎だ、よろしくな!」
同じ学年だったんだ。
背が高いから先輩かと思った。
それにしてもすごいタメ口だな。
これで私の方が先輩だったらどうしてたんだろう。
そんなことを呑気に考えていると、同じクラスになるかもな、なんてふざけた声が。
私も確かに、と笑いながら返す。
初対面の人を笑う失礼な奴だけど、面白いかもしれない。
「私こそ、よろしくね!」
よろしくと言った時の太陽のような笑顔が瞼の奥に残った。
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作者名:ゆかり@神無月 | 作成日時:2018年9月25日 23時