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「そうもいかない」


お兄ちゃんがそう云ったが、私は少し迷った


男は、ならばお前が書け、とお兄ちゃんに云った


「それが唯一、その小説を完璧なままにしておく方法だ」


自分で書くなんて、考えもしなかった事だ


「小説を書く事は、人間を書く事だ」と男は云った


「人間はどう生きて、どう死ぬべきかという事をな。儂の見たところ、御前等にはその資格がある」


そんな資格、ある訳ない。お兄ちゃんも思った筈だ。その日も私達は人を殺した


だがその言葉には奇妙な説得感があった


私達と違い、男の目には何光年も先から届いたような澄んだ光があり、その声は大地そのものが震えて発せられているような確かさがあった


「名前は?」


「儂か?儂の名は───」

五→←三



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作者名:MIA | 作成日時:2017年7月5日 21時

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