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専属情報員である安吾は、他組織と秘密情報をやりとりする情報の運び屋。


どの幹部派閥にも属さず、首領の命令で取引の日程、同盟、内通や離反、裏切りの斡旋など、重要で気密性の高い情報を運ぶ。


謂わば闇の密使。組織の趨勢を決める重要情報は、殆どが安吾を介して首領の許へ届く。


安吾を拷問し情報を吐かせれば、黄金よりも貴重なマフィアの情報が手に入る。


生半可な人間ではその大役を任せられない訳で、よった鉄線のようなタフさが必要だ


「歴代最少年幹部二人に較べれば、僕の業績など学生の履歴書も同然ですよ。

ところで今日三人がこの店に居るのは、何かの会合ですか?」


「んー、何でだろ」


「どうだっけ、織田作?」


私達の代わりにお兄ちゃんが、いや、と答える


「何の予定でもない。

偶然ここに来たら太宰とAが居ただけだ」


「そう?私は今夜ここに来たら、君達二人に会える気がしてね。
なんとなく来た

でしょ?A」


「うん、そうだね」


「僕達に用事があったのですか?」


「別にないよ。

ただ、そうしたらいつもの夜になるかな、と思っただけさ。
それだけ」


そう云って太宰はグラスを爪で弾いた


私達はよく、何かから逃げるかのようにこの酒場に集まる。


そして、意思疎通とは名ばかりの、意味のないやりとりを深夜まで交わす


太宰と私は幹部、安吾は情報員、お兄ちゃんは最下級構成員と、立場がかけ離れているため、本来なら酒を酌み交わすどころか、互いの名前すら知らなくても不思議ではない。


だがこうして立場も年齢も関係なく、私達は互いの言葉に耳を傾けている


誰にも説明出来ない不思議な関係を、何かの縁と云う言葉で私は片付ける


私達はそんな不思議な関係を気に入っている

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作者名:MIA | 作成日時:2017年7月5日 21時

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