懐かしい夢 ページ21
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「大丈夫。私が貴方を守りますから」
その言葉に、どれほど救われただろうか。
雪が降り積もる、寒い日のことだった。
何かのきっかけで母の怒りスイッチを押してしまい、反省しなさい と家を追い出された。
かじかむ手や足を必死に擦り合わせ、手のひらに息を吐いたり服の中に腕を引っ込めたりと必死に暖を取ろうとしたが、暖かくなるどころか余計悪化した。
雪の冷たさが足の裏から全身へと周り、早くも凍死すると覚悟を決めた時だった。
「おや…なんですか。お前は」
その時、私はオペラさんと出会った。
質問に答えようとしたが、歯がガチガチと鳴り、まともに喋ることができなかった。
そんな私にオペラさんは着ていたコートをかけてくれた後、何も言わずにおんぶをしてくれた。
「私の家、すぐ近くなんです。寄っていきますか?」
知らない奴について行くな、と教えられなかった私はあっさりと頷いてしまった。
たとえ教えられていたとしても、あの時の寒さには勝てなかっただろう。
ものの数十分で連れてこられた団地は、自分の家と比べたら遥かに立派なものに見えた。
部屋の中はもっと驚いた。
まず、廊下にゴミ袋ひとつないことに驚いた。
むしろ綺麗に磨かれた床を見て、怖気付いたくらいだ。
「とんでもない金持ちの家に来た」と。
ストーブの前に座るよう促されるが、こんな汚い格好じゃ座れない。置かれたクッションを避けながら、遠慮がちにしゃがみこむ。
ぼうぼうと暖かい熱気を受け、ようやく体の冷えが治まってきた。
そのとき、私は初めてホットミルクを飲んだ。
あの時の衝撃と感動を今でも忘れないほど、大好きな飲み物となった。
オペラさんは名前も聞かずに、何故あんなところにいたのか聞いてきた。
しかし、私はその頃魔界の言葉を喋れなかった。
聞き取りや文字は読みができても、発音ができないのだ。
書くことすら怪しかった私は、当時本当に迷惑をかけた。
汚く綴られた文字を、オペラさんは眉間に皺を寄せながら何分もかけて解読していた。
「なるほど…怒らせてしまったのですね。それで反省するよう、家を追い出されたと」
精一杯頷く私に、オペラさんは微かに笑みをうかべながら、こう言った。
「お前が…いえ、貴方が生きたいというのなら、私は貴方に魔界で生きていくうえで必要なこと、大切なことを教授します。どうしますか?」
私はつたないながらも、しっかり伝えた。
「よろしくお願いします」と。
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ペグ(プロフ) - あまねさん» あまねさん、コメントありがとうございます!ご期待に添えるよう、精進します!·͜· ꕤ︎︎ (5月10日 16時) (レス) id: a660ffe1a2 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 好きですぅぅ (5月9日 9時) (レス) @page45 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ペグ(プロフ) - めぇちゃりおる.⁠。⁠*⁠♡さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます!多忙期により更新が不安定ですが、暖かい目で見守ってください₍ᐢ‥ᐢ₎ ♡ (2月15日 15時) (レス) id: a660ffe1a2 (このIDを非表示/違反報告)
めぇちゃりおる.。*♡ - この作品読んだ瞬間お気に入りになりました!!更新も楽しみにしてます! (2月15日 14時) (レス) @page26 id: 094e17a662 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ペグ | 作成日時:2024年1月30日 22時