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嵐の様な人だったな、梶井君
と云うか宇宙大元帥とは一体何なのだろう
なンて事を考え乍
執務室に戻っていたら
向こうから姐さんが歩いて来た
「先刻は行成済まなかったのう」
先刻?嗚呼私が驚いた時の事を云ってるのか
「じゃが彼処迄驚かンでも良かろうに」
「唐突の事だったので…」
「のうA。
部外者なりとも其方等を見ていた」
微笑んでいた姐さんは
急に真剣に私を見つめ、凜とした声でそう云った
「な、何ですか?行成」
「まあ聞け」
「はい…」
「長い間其方等を見てきた故に
一言云わせて貰おう______己を偽るな」
『己を偽るな』
其の言葉がグサリと何処かに突き刺さった音を
私は聞いた。
其の言葉に胸を騒つかせる動機など
心当たりなどさらさら無いのに…
「何故先刻の事を鴎外殿に隠しておった?
少し強請っても撥は当たらぬと思うが」
「…っ私は、只の鴎外さんの秘書ですから
強請るなンて事しませんよ」
其れに、今そンな事を言える時でも無いし
「そうかのう?」
「そうですよ」
「そう思っておるのは
若しやAだけかも知れぬぞ?」
其の言葉に復揺らぐ。
何故、何故こンなにも聞いてて苦しいのか
「其れに、何やら二人でやっておる様じゃが
其れを理由にするのも良く無いぞ」
「っ、何故其れを____」
そンな不安定な時に機密事項の件に触れられ
私は露骨に警戒してしまった。
本来なら幹部クラスの姐さんは
其の事に少しなりとも気付いていて当然なのに
「判っておる。余計な散策はせん」
「あっ…済みません」
拙いな、今は色々不安定過ぎる。
感情も思考も何もかも
「後は二人で解決せい。
「あ、姐さん!」
其れだけ云うと私の声も聞かず
姐さんは去ってしまった
ぐじゃぐじゃの頭の中で姐さんの言葉が
再生される
…そう思っているのは私だけ?真逆
私と鴎外さんは秘書と主人
十四年前の彼の契約により私は鴎外さんに
全てを捧げた。
其れだけ、只其れだけの関係なのだ
其れを私が一方的に超えた思いを抱いている
と云うだけ
本来契約と云う非情緒的な繋がりで有る
私達の関係を、私が一方的に情緒的繋がりに
しているだけ
“あの人の側に居たい”
我ながら馬鹿だと思う。
常に理を追求する鴎外さんに
情緒なンて云う非合理的な繋がりを
持ってしまったのだから…
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麗(プロフ) - 15ページ 中也君な ではなく 中也君の ではないでしょうか? (2021年5月24日 7時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ザック - 面白かったです。ミステリアスで、文も読みやすかったです。ありがとうございました! (2020年1月8日 19時) (レス) id: fc99185244 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - あれ?なんでだろう、目から塩水が (2019年8月12日 12時) (レス) id: 610253a17e (このIDを非表示/違反報告)
はなを(プロフ) - 幸人さん» コメント、そしてお気遣いありがとうございます!これからの展開にどうぞご期待ください! (2019年6月21日 18時) (レス) id: e980c2186f (このIDを非表示/違反報告)
幸人 - とっても面白いです。無理をしない程度に更新頑張ってください。 (2019年6月21日 8時) (レス) id: fa5f2782df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなを | 作成日時:2019年6月17日 18時