雪の降る日に捨てられた悪魔 (ページ44)

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食事の場ではサリバンの泣き声だけが響いている。

オペラ「…まさか、二人同時に“悪周期”が来るとは、予定外でしたね」

いつもよりも、数段低い声でオペラは窓の外を見る。

学校へ続く道には人っ子ひとりおらず、イルマとAは登校した後だった。

＿＿＿＿
アズ「イルマさま、力の加減はいかがですか？」

クララ「お菓子、食べる？」

アブノーマルクラスの一角。

いつもとは態度も雰囲気も違うイルマの世話を甲斐甲斐しく焼く二人がいた。

リード「どうなってんだ？あれ」

ジャズ「イルマくん、だよな？」

エリザ「いつもと様子がちがうわね」

その様子を遠巻きに眺める他のクラスメイト。

リード「ってか、違うといえばAちゃんもじゃね？」

リードは端の席で耳にイヤフォンをさし、突っ伏しているAを見た。

ジャズ「あ、やっぱり？」

ガープ「確かに、今日朝の挨拶をしたら無視されたでござる」

いつもならば、己から進んで「おはよう！」と手を挙げながら積極的に会話をするAは、身だしなみも生徒の模範となるような気こなしをしている。

しかし、今は制服の上からパーカーを羽織り、靴の踵を踏んでいる。

スカートはいつもの膝上五センチよりも短い。

リード「これってもしや…」

リードは生唾を飲み込む。

リード「“悪周期”なのでは」

その場にいた他の面々もその言葉に、生唾をのみこんだ。

エリザ「Aちゃんって悪周期になるのね。一度もなったことがないって言っていたけど」

顎に手をあてるエリザベッタ。

ガープ「その話、拙者も聞いたでござる。大抵のことはイラつく前に対処できると」

その言葉に皆息を詰まらせる。

『いったい、どれだけ強大なストレッサーがいるのか』

比較的寛容な彼女をああも変えてしまうものはなんなのだろうと。

イルマ「寒い…上に臭くないか？」

ふと、イルマが首を上げ、立ち上がった。