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A「なにそれ、信じられない」
イルマさまと別れて気が立ってるアズに向かって、私も蔑みの目線を返した。
A「確かに大丈夫だったかもしれない、だけどそれはあくまで推定の域を出ない。
アズのことだからイルマさまの有利になるよう働こうとしたんだろうけどね、こんな所で見せ場もなく退場したらどう言う目で見られるのかわからないの?
イルマの為に何かを成そうとして何も成せなかった唯の脇役になるんだよ?
イルマさまがそれを知ったら悲しむことぐらいわかるよね?」
一息に、捲し立てる。
イルマさまのことを一番に考えるアズが、イルマさまのことを悪気がなくても悲しませようとしたことが癪に触った。
もっともっと言いたいことはたくさんあったが、カルエゴ先生の早く退場しろという視線が厳しいので外野に回る。
外野に周りゲームが進んで行く中で、内野は一人、また一人と減り最後にはアズとイルマさまだけが残る。
私の言葉が響いたのか響かないかはわからないが、アズは依然としたまま何かを考えるような表情をしていた。
そうして、コート内に自分とイルマさまだけが残ったのを確認すると表情を和らげた。
あぁ、ダメだ。
私はそう思った。
あの表情は、八百長でイルマさまを勝たせようと、華を持たせようとしている顔だ。
堕ちたな、とも思った。
礼節を重んじる家系のアスモデウスが、真に真で返すことを放棄した。
信仰心にも近いアズの抱く感情は、己の軸まで曲げてしまうのか、と心底がっかりする。
つまらなくて、足で地面をいじり始める。
見た所で
しかし、それは一瞬のことだった。
腑抜けた雰囲気が“変わった”
ふ、と顔を上げる。
視界にいっぱいに映る大きくて熱い炎。
アズ「全力には全力で」
アズの顔は強張っていた。
悪魔が悪魔に対して向ける闘争心を垣間見ることができた。
心が躍る。
名家、アスモデウスの嫡男。
彼の全力を熱気さえ感じる程近くで見ることができるのだから。
大きくなる炎、増していく魔力量、並の悪魔を捩じ伏せるほどの殺気。
これこそ、悪魔の真の姿。
堕ちた悪魔は自分の愚かさを知り這い上がって来たのだ。
緊張感に鼓動が速まる。
アズの手から一瞬で放たれたそれは真っ直ぐイルマさまに向かい、その勢いのままボールは打ち返された。
ボールはアズの肩にあたり決着はついた。
アズに対しての憤りはいつの間にか興奮に変わっていた。
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テト(プロフ) - ヴァイオリン弾いてる夢主ちゃん、、、私直視したら失明するかもな、、、 (1月2日 1時) (レス) @page35 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラーメン x他1人 | 作成日時:2023年12月6日 0時