30 ページ31
クイーンが衣装を選ぶために船室から飛び出してもAはまだ眉根を顰めていた。
A「私、あのぶりっ子嫌いなのよね…」
やれと言われたらやるけれども、とAは口ごもる。
そうして数秒後、はっと顔を上げた。
A｢もしかして、クイーンはアルバムに
"ジョーカーくんとA、映画デビュー!!"
なんて、記すためにこの配役にした訳じゃないでしょうね｣
その瞬間、ジョーカーとAの目がしっかり会う。
そして頭の中を駆け巡る甘酸っぱい思い出。
拾われた時から今まで、クイーンは写真を撮ってはアルバムを、それはそれは丁寧に且つド派手に作り上げていた。
ジョーカーが写真を本格的に嫌がる年になるまでは船室でも、マスキングテープと色ペンをもって写真を熱心に彩っていた。
ジョ･A「「………………………」」
───
クイーン｢まぁ、決まってしまったことはさておき、四龍島城砦までの短い船旅を楽しみましょう。」
朱マネージャ───いや、クイーンの手が、ジョーカーの肩をポンと叩いた。
ジョーカーには、その手がずっしりと重かった。
対照的に、楽しそうなクイーンは、大きく伸びをする。
クイーン「RD、君にもこの快適なフェリーの旅をさせてあげたいよ。」
［その気持ちだけで、十分です。
それに、貴方たちのサングラスにつけた小型カメラで、風景は見ることができますから。］
3人の耳につけた超小型受情機から、RDの声がした。
A｢トルバドゥールは、今どこに居るの？｣
Aが、奥歯に仕込んだ超小型通信機を使ってRDにきいた。
この通信機は口を動かさなくても、奥歯の動きだけで言葉を伝える優れものである。
(クイーンは、加速装置もつけてくれと頼んだのだが、RDに却下された。)
［既に四龍島城砦の上空六千フィートの地点に待機しています。］
その声が聞こえてきた時、ほかの客の声も聞こえてきた。
声の方を見ると、デッキの反対側で、手すりにもたれてふたりの男が話していた。
カジュアルな服装から、休みを利用して四龍島城砦へ遊びにいくのだと思われる。
「あー、休みが、もうすこしあとだったらよかったのにな。」
髪を七三に分けた、背の高い男がいった。
「どうして？」
隣にいる、小太りの男がきく。
「だってさ、玉嘉楽の誕生パーティーの日なら、島もお祭り騒ぎで盛り上がってるじゃん。」
「そうだな。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ラーメン | 作成日時：2023年7月22日 1時
