歪みと距離 2 ページ2
「あ、美優紀おかえり」
家に入ると、姉がいた。
「うん」
私はそれだけ言って、部屋へ続く階段を登る。
「ご飯は？」
「いらない」
21歳になる姉は私と全く似ていない。
外見もだけれど、中身も全く正反対だ。
「お腹空いたらLINEして。
何か持って行ってあげるから」
そして何より、彼女は優しい。
私はこの家の子供ではない。
私は両親に捨てられ、親戚にも捨てられた惨めな子供だ。
幼い頃は孤児院に入っていた。
子宮頸がんによって子宮を摘出した女は、一人の娘と夫がいた。けれど昔から、一人っ子だった男と女はお互い小さい頃から無い物ねだりで兄妹が欲しかった。
だから、娘には姉弟がいてあげて欲しいと思った。
そして、ここの家族に私は拾われたのだ。
トントン
静まり返った私の部屋に、ノック音が響いた。
「美優紀？」
そっと開いたドアから、部屋の中に灯りが溢れてくる。
「また真っ暗にしてる」
呆れぐわいに言ってから電気をつけた。
目はその明るさについていけなくて閉じる。
そして、もう二人とも寝たからお風呂入ったら？と姉は言った。
「うん」
私は両親と上手くいっていない。
というより、私が拒んでいるだけだ。
なんだか好きになれない、家族と思えない。
なんでかわからないけれど。
「もう少し早く帰ったら？」
いつだって気にかけてくれる姉は優しい。
本当に根っから性格が良い。
だけどそれが余計、私を苦しめる。
「達兄のこと好き？」
幼い頃に聞いた時、彼女はうぅんと首を横に振った。
だけどそれは突然裏切られた。
私が昔から好きだった達兄を、姐は一瞬にして奪い去った。
だから、いっそ憎いヤツで嫌いなヤツだったら良かったのに。
そしたら、私は姉から達兄を奪うために何だってできたのに…。
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作者名：ハル | 作成日時：2017年1月2日 19時
