難しいこと言わないで ページ29
どうやらアタシに先輩と呼んで欲しい人間は存外多かったようで、アタシは逃げるように外に出て風に当たっていた。
オリオン財団のこと。
まだ受け入れるのには時間がかかりそうだ。
でももう受け入れなきゃいけない段階まで来てるよなぁ…
海を眺めながらそう思っていると、後ろから声をかけられる。
「鬼道、センパイ」
「言い辛かったら今まで通りで構わない」
「…やっぱ敬語も敬称も無理だわ」
お金持ちの家の人らしい鬼道君は、スーツ姿がとても似合う。
大人っぽい雰囲気を持ってるからかな。
「世崎は、大丈夫か」
「何が？」
「オリオンのことだ」
鬼道君は気遣うような視線を向けてくる。
「俺は、オリオンを叩くのに躊躇いは持っていない。他の奴らもそうだろう。でも世崎、お前は違うだろう」
「そりゃあね、複雑だよ。でもオリオンを庇えるだけの材料がないから」
「それもそうだな」
波の音が聴こえる。
風が強く、波も大きくゆらゆらと揺れていた。
鬼道君はどこか遠くを見ながらはっきりと言った。
「信じるものは、お前が決めるんだ」
「アタシが…？」
「そうだ。実際にオリオンの本質を知ってから、どうするのか決めるといい」
実際に…
何となくそうしようと考えてはいたが、第三者に言われると、改めてはっきりとやるべきことが明らかになった気がした。
「不義理じゃ、ないのかな」
「不義理？」
「アタシを拾って、ここまで育ててくれた…オリオンへの恩を裏切るのは、怖いよ」
もしもオリオンが本当に"パーフェクトワールド"とやらを実現させようとしていたら。
止めなきゃいけないんだろう。分かってる。
けれど、そうしてオリオンに捨てられるのが怖い。
αの皆にどう思われるかが怖い。
"私"を拾ってくれたオリオンを裏切るのが怖い。
「オリオンに付き従う事だけが恩を返す方法じゃない」
「そうかな」
「それも含めて、お前が決めるんだ」
鬼道君はアタシを真っ直ぐ見る。
ゴーグルから見える目は、厳しくて、そして強い意志が籠もっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むめい(プロフ) - シナモンさん» ありがとうございます！私も書いていて楽しい回でした！ (2月16日 20時) (
レス) id: 080d3d10ab (このIDを非表示/違反報告)
シナモン(プロフ) - 壮行会のところめっちゃおもしろかったです!続きを楽しみに待っています!がんばってください。 (1月16日 19時) (レス) @page27 id: 52a06b9707 (このIDを非表示/違反報告)
むめい(プロフ) - 歌姫さん» ありがとうございます！ちょっと行き詰まってたので励みになります！ (11月21日 22時) (レス) id: 080d3d10ab (このIDを非表示/違反報告)
歌姫 - いつも楽しみに読んでます。これからも頑張ってください (11月13日 23時) (レス) id: 0734f30b1c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むめい | 作成日時：2023年10月26日 23時
