295:硬直 ページ47
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後ろから聞こえてきた声に、身体が硬直する。
HS「何でこんな奥地にいるんだよ」
TH「ホソガ遅いよ!Aのことお持ち帰りしちゃう所だった」
HS「五年間いつでもそのチャンスはあったんじゃないの」
TH「そんなやつだと思われてたら心外なんだけど」
HS「こんな雰囲気のあるバーを行きつけにしといて?」
TH「俺に奪うことは、結局できないよ」
ホビオッパが、居るの?本当に?
この声は幻聴じゃなくて?
あまりに普通にテテ先輩としゃべってる。
テテ先輩が「トイレに行ってくるね〜」と席を立つ。
空いたばかりの席は、またすぐに埋まる。
スラっとした足。革靴だ。
あ、ダメ。顔を上げられない。
気付けば硬く握りしめていた手を取られ、ほぐすように開かれていく。
ふにふに親指の腹で、私の手のひらをマッサージする。
HS「今日日本から帰ってきてさ、テヒョンイにいきなり呼び出された。手持ちの荷物も全部コインロッカーに預けてきたよ」
本物だ。本当に居るんだ。
HS「ドクターほびほびだよ」
変わらない可愛い声に、思わず口角が緩む。
HS「顔見せてくれないの?声も聴きたいな」
『ホビオッパ…』
HS「ん?」
ちゃんと目を見つめる。
好きな人。
五年間忘れられなかった、とってもとっても愛しい人。
『おかえりなさい』
HS「ふふっただいま」
ギュッと抱き着いて、オッパの首筋に顔を埋める。
全部がしっくりきた。
HS「テヒョンイのキスをあんな風にいなすなんて、知らない間にすっかり大人の女性になってて驚いたよ」
『オッパ』
HS「でも子供みたいに飛び込んで来てくれて、安心した」
優しく包まれるだけで、心がきゅうきゅうと締め付けられる。
HS「ダメだ…伝えたい事も聞きたい事もいっぱいあったはずなんだけど、全部とんじゃった」
『ずっと、こうしてたいです』
HS「もしAが誰かと幸せになってたら、ちゃんと諦めようと思って帰ってきたんだ。
けどそんなの無理だ。やっぱり俺が抱きしめてあげたい。
あ〜そんな泣かないでよ」
『ホビオッパだけです。五年間も、この先もずっと…』
細められた瞳に捕らえられる。
頬を伝う涙は優しく掬われていった。
HS「A、愛してる。もう一度俺の恋人になってくれませんか?」
『はいっ…』
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あさなさな(プロフ) - pumpkinさん» たくさん読んでいただきありがとうございます!色んなホソクさんを楽しんでいただけたらと思います。なんとなく似てしまうのはご愛嬌笑 (9月11日 18時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - 本当にあさなさなさんの世界のホビ素敵すぎます。全作品読ませてもらってます。癒しの時間をいただいてます。素敵な作品をたくさんありがとうございます!! (9月8日 11時) (レス) @page50 id: 3dc2269bbe (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - 鹿さん» 長いのにありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!こちらはもっと山あり谷ありですね笑 (8月10日 17時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - うわあ三日で頑張って全部読みました!最高ですね!こんなにリアルで切なさを描いた小説初めて読んだ気がします。 (8月10日 3時) (レス) @page50 id: 6f7661d487 (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - フネ55さん» 楽しくて悩ましい大学生活を描きたかったので、嬉しいです!微々たる供給ですが、楽しみにしてくださってありがとうございます! (7月23日 19時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2023年5月31日 17時