292:源 ページ44
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博士課程に進むかどうか。
博士まで取った後に、バイオ系の研究所に所属したいというのが理想だ。
けれどそこで自分の好きな研究ができるとは限らないし、そもそも所属できるかどうかも狭き門だ。
一般企業の研究職を目指して、片っ端から受けた方が良いかもしれない。
そうなると、博士を何が何でも取る必要はない。
親は好きなようにして良いと言ったが、学費を出してもらっているから、慎重に考えたい。
『まだ…迷ってます』
TH「俺はAが残ってくれたら嬉しいけどな」
『生活していかないといけないし、でもやりたい事はあるし、その妥協点って難しいですよね』
TH「博士に進むと、漏れなく三年は好きな研究できるよ〜」
『そうなんですよ!テテ先輩羨ましい』
TH「この前ジミニヒョンと飲んでてさ、今やってる事合わないみたいで、ずっと愚痴ってたよ」
『いつですか?私も誘ってくださいよ』
TH「Aだってソクジニと二人で飲みに行ってたじゃん」
『テテ先輩の予定が合わなかっただけじゃないですか』
TH「埋め合わせしてよ!」
『そうですね』
笑って答えると、頬を膨らませて「今すぐ空いてる日教えて!」と詰め寄ってきた。
スマホのスケジュールアプリを起動させながら、覚えている範囲は口にだす。
『えっと、とりあえず今日は空いてます』
TH「今日はダメ」
『私も明日はダメなんで…』
TH「今日はホソギとご飯食べるから」
スマホから視線を上げると、少し寂しそうな表情。
雨が窓を打ち付ける音が強く響いていた。
TH「三年経ったよ。
ホソギが日本に行っちゃってから、三年」
持ったままのタッパーに視線を落として、キッチンペーパーの汚れをぼんやり見る。
TH「A思ったより普通だったよね。もっと泣いたり落ち込むかと思った」
誰にも心配されないように、上手にできるようになっていた。
TH「それとも隠れて泣いてた?今も忘れられない?」
『もう三年ですよ』
忘れないけど、今も泣いたりなんか…
TH「どんどん強く、綺麗になっていくね。その源にあるのは、ホソギなの?」
『テテ先輩、今日大学に来てて良いんですか?待たせて』
TH「今日、一緒にご飯食べる?」
何か言おうと思ったけど、薄く開けた口からは空気しか出なかった。
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あさなさな(プロフ) - pumpkinさん» たくさん読んでいただきありがとうございます!色んなホソクさんを楽しんでいただけたらと思います。なんとなく似てしまうのはご愛嬌笑 (9月11日 18時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - 本当にあさなさなさんの世界のホビ素敵すぎます。全作品読ませてもらってます。癒しの時間をいただいてます。素敵な作品をたくさんありがとうございます!! (9月8日 11時) (レス) @page50 id: 3dc2269bbe (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - 鹿さん» 長いのにありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!こちらはもっと山あり谷ありですね笑 (8月10日 17時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - うわあ三日で頑張って全部読みました!最高ですね!こんなにリアルで切なさを描いた小説初めて読んだ気がします。 (8月10日 3時) (レス) @page50 id: 6f7661d487 (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - フネ55さん» 楽しくて悩ましい大学生活を描きたかったので、嬉しいです!微々たる供給ですが、楽しみにしてくださってありがとうございます! (7月23日 19時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2023年5月31日 17時