286:口実 ページ38
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口実がないとホビオッパに会えない。
少し前まで当たり前に毎日一緒にご飯を食べて、毎日一緒に寝ていたのに。
全部飲み込めば良かったのかな。
この階の別の人が帰ってきて、興味津々といった様子で見られる。
やっぱりアパートの入り口近くで待とうかと階段へ向かったら、丁度ホビオッパが登ってくる所だった。
HS「A？」
『あ、オッパ…その、聞きました。合格、おめでとうございます』
慌てて立ち止まって、どうにかその言葉を告げる。
オッパは私を見上げたまま、しかめたような表情で口角を上げて微笑んだ。
その瞬間、来てはいけなかったんだと思って「じゃあ帰りますね」と階段を下ったのに、途中でそれ以上降りれなくなる。
『は、離してください』
HS「Aに伝えたいことがある。上がっていって」
コトッとコーヒーの入ったマグカップが置かれる。
一緒に買いに行ったカップ。
とても飲む気にはなれなくて、死刑を言い渡される囚人のような気持ちで、オッパの口が開くのを待つ。
HS「ありがとう。わざわざおめでとうって、言いに来てくれたの？」
『…はい』
HS「これも、その、言えてなかったんだけど…
一貫制の博士課程に受かったから、向こうには最低でも五年は行くことになる」
『五年…』
そんなに。
HS「本当は、本当はね。タイミング見ていっぱい帰ってくるし、メッセージも電話もいっぱいするから、俺の彼女のままでいて欲しいって言いたかった」
オッパの言わんとする事が分かってしまった。
また勝手に一人で決めて、完結してる。それは私のためって言うんでしょ。
心臓がヒリヒリしてくる。
また声が出ない。
苦しくて息ができない。
HS「けどそれは俺のわがままだ。この先のAの未来を縛るなんてことできない。それに見合うだけの人物じゃない」
五年の遠距離恋愛だって、私頑張るよ。
それくらいオッパは私にとって必要な人なのに。勝手に私を、諦めないでよ。
目が潤んでいくだけで、何も言えない自分が悔しい。
オッパが私の手を握る。
いつもは安心させてくれる。けれど今日は、その手が怖い。
HS「だから、俺と、
別れてほしい」
首を横に振る。
そんなのあんまりだよ。
決壊した涙でしゃくり声しか上げられない私を優しく抱きしめる。
中途半端な優しさで慰めないで。
それなら今の言葉を撤回してよ。
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あさなさな(プロフ) - pumpkinさん» たくさん読んでいただきありがとうございます！色んなホソクさんを楽しんでいただけたらと思います。なんとなく似てしまうのはご愛嬌笑 (9月11日 18時) (
レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - 本当にあさなさなさんの世界のホビ素敵すぎます。全作品読ませてもらってます。癒しの時間をいただいてます。素敵な作品をたくさんありがとうございます！！ (9月8日 11時) (レス) @page50 id: 3dc2269bbe (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - 鹿さん» 長いのにありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！こちらはもっと山あり谷ありですね笑 (8月10日 17時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - うわあ三日で頑張って全部読みました！最高ですね！こんなにリアルで切なさを描いた小説初めて読んだ気がします。 (8月10日 3時) (レス) @page50 id: 6f7661d487 (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - フネ55さん» 楽しくて悩ましい大学生活を描きたかったので、嬉しいです！微々たる供給ですが、楽しみにしてくださってありがとうございます！ (7月23日 19時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あさなさな | 作成日時：2023年5月31日 17時
