そんなふうに、見ないでほしい 6【HS】【TH】

280:弱さ ページ32

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TH「A、俺が言うのも変だけど…

逃げちゃだめだよ。二人のために」




グッとドアノブを握り込んで、振り返らずに廊下に出た。



















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結局逃げてしまった。
人間の本質なんてそう変わらないもので、大事な時に臆病になるのは変わらない。
自分だけの中で、たった一人、落ちてしまいたかった。受け止める為に。




さっきからスマホが震えてる。
画面は見ていないけれど、電源は切れなかった。

少しして、部屋のインターホンが鳴った。


ホビオッパが来てくれたのかもしれない。
本当に申し訳ない。大事な時間を削って来させてしまった。

そんなことしたかった訳じゃないのに、でも玄関には向かえなかった。




HS「Aいる？開けるよ」




開錠される音がして、足音が近づいてくる。
オオサンショウウオとベッドの上で小さく座っていた私の前で、すとんと床に膝をつく。




HS「ごめん」




テテ先輩が伝えたのだろう。全て分かっている声だった。




『謝らないで下さい。私が、聞き分けの悪い子みたいじゃないですか…』




実際聞き分けが悪い子なのに。こうやって、迷惑をかけているのに。




HS「何も伝えてなくて本当にごめん。

だからお願い。急にいなくならないで」




顔を上げてオッパの顔を見る。
今日の朝も一緒のベッドで起きて、また少し濃くなった隈を心配した。

これ以上、負担をかけたくないのに…




『オッパだって、急にいなくなるつもりだったんですよね』




HS「そうじゃなくて、合格したらって思ってて…そこまでどうなるか分からないし。
余計な心配させたくなくて」





『私言いました。私もオッパの事心配したいって。一緒に荷物背負いたいって。

私はオッパの愛玩動物じゃありません！
言ってくれてたら、もっと支えられたかもしれないし、その、お、応援しました。

でもこんな…ずっと隠されてて、もうよく分かんないです』




HS「何度も言おうと思って…！でも、言えなかった。本当にごめん」




複雑そうな、含みのあるようなオッパ、確かに最近多かった。

言いにくいのは分かる。悩んでいたのも分かる。
けれどそれじゃあ、私とオッパ、あまりにも他人じゃない…




HS「俺が弱かったからAに言えなかった。言うのが怖かった。日本に行きたい気持ちと、落ちても良いって気持ちがずっとあって。

落ちたら、何もなかったみたいにできるかなって…」


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