279:大事なこと ページ31
.
『何をですか？』
TH「ホソギの進路…」
『進路って、院を受けましたよね』
TH「そうだけど…何も、聞いてないの？」
『何がですか？どういう事ですか？』
TH「後で、ホソギがいる時に…」
テテ先輩は目をうろうろさせながら、唇を舐める。
どういう事？
『何か大事なこと、私、知らないんですか？』
言葉を区切ってゆっくり聞くと、固まったテテ先輩がそっと私を見た。
TH「や、俺も詳しくは知らないから、俺の口から言うのは…」
酷く言いたくなさそうにしていたが、じっと見つめていたら、観念したように口を開く。
TH「分かったよ。俺が知ってる事は教えるよ」
物凄く不安で、まだ何も聞いていないのに、テテ先輩が少しぼやけた。
TH「日本の大学院、受けるんだって」
頭の中枢が麻痺したような、周囲がグルグル回っているような、水平がずれる感覚がした。
そんな事、全く言っていなかった。
『日本の大学院…』
TH「なんか！隣の市の大学院も受けるみたいだし、いっぱい受けるって言ってたんだけど…」
慌てたようなテテ先輩が情報を付け加えるが、要はこの大学の院に進むつもりは、あまりないって事なんだ。
そしてたくさんの院を受ける事も知らなかった。
TH「でも…その、日本の大学が、第一志望だって……」
『教えてくださって、ありがとうございます』
TH「A、ごめん…」
『何でテテ先輩が謝るんですか？』
笑って返したら、テテ先輩の顔が引きつった。
TH「無理に笑わないで」
『私、ホソク先輩の何なんでしょう。こんな大事なこと教えてもらえなくて…』
TH「俺、言ってると思ってたんだ。随分前から悩んでたし。
Aと付き合ってからは尚更、」
『その時には、既に考えてたって事ですか？』
TH「あ…」
『すみません。テテ先輩に聞くことじゃないですよね。今日、帰ってから聞いてみます』
そろそろ次の授業のために移動しなければならない。
私に言ったら、反対されると思ったのかな。引き留められると思って言いたくなかったのかな。
絶対に応援するのに。
心から応援、できる、かな…
分からない。苦しい。隠されていた。
今日は聞けないかも。自分の家に帰ってしまおうか。
私は一言も聞かされてなかったのに…
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 202人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あさなさな(プロフ) - pumpkinさん» たくさん読んでいただきありがとうございます！色んなホソクさんを楽しんでいただけたらと思います。なんとなく似てしまうのはご愛嬌笑 (9月11日 18時) (
レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - 本当にあさなさなさんの世界のホビ素敵すぎます。全作品読ませてもらってます。癒しの時間をいただいてます。素敵な作品をたくさんありがとうございます！！ (9月8日 11時) (レス) @page50 id: 3dc2269bbe (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - 鹿さん» 長いのにありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！こちらはもっと山あり谷ありですね笑 (8月10日 17時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - うわあ三日で頑張って全部読みました！最高ですね！こんなにリアルで切なさを描いた小説初めて読んだ気がします。 (8月10日 3時) (レス) @page50 id: 6f7661d487 (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - フネ55さん» 楽しくて悩ましい大学生活を描きたかったので、嬉しいです！微々たる供給ですが、楽しみにしてくださってありがとうございます！ (7月23日 19時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あさなさな | 作成日時：2023年5月31日 17時
