276:動的平衡 ページ28
.
『……嫉妬、ですか？』
自分でそんなことを聞くのは恥ずかしかったけれど、そっと伺うように聞いてみた。
HS「どっかのヌナが、照れてるからね」
『だって、呼ばれたこと無かったんですって』
HS「へぇ〜」
『待望の新入生じゃないですか』
オッパは歩くのをやめて、私もそれに振り返る。
酔いが回って重そうな瞼で、夜空を見つめている。
HS「"動的平衡"だ。ヒョンや俺らがいなくなってもAやナムジュナが、新しい粘菌研究会を築いていくんだね…」
『どうてきへいこう…？』
日本語？何かの概念かな。
ふらりとホビオッパが倒れ込んできた。
『え、大丈夫ですか？オッパ？』
HS「ホビオッパだよ〜」
まだ意識はあるみたいで、ごめんをうわ言のように繰り返す。
なんとか自分で歩いてくれるため、一年前と同じように、支えながらオッパのアパートまでの道をゆっくり歩いた。
同じ年だったら良かったな。いや、それでも兵役で二年ずれちゃうのか。
年齢差や国の法律が、ちょっと恨めしく思えた。
サークルや学校は、一定の期間で押し出される。
もうすぐ四年生が引退だというのが寂しいけれど、触れた所に感じる熱はそれを少し和らげた。
この人とだけは、一緒にいられると信じて疑わなかった。
毎週のランチミーティングにナムジュナが加わって、月曜日にボムギュとテヒョンとの顔合わせを済ませた。
フィールドワークをして、テテ先輩プレゼンツでイシクラゲ採集会＆パーティーもした。
九人入る部屋ってことで、溜まり場は私の部屋で続投することになってしまった。
ナムジュナはユンギ先輩とそこで仲良くなっていた。
夏休みに今年も少年自然の家で、五人で更に仲を深めて、四年生の二人は引退を迎える。
春学期が始まっても、私はほとんど毎日ホビオッパの部屋に帰っていた。
だから四年生になってから、さらにパソコンや机に向かう時間が増え、努力しているのは誰よりも知っていた。
院試対策とはいえ、夏休みの勉強の追い込み方は不安になる程の集中力。
うちの大学は夏休みの終わり頃に院試があるので、テテ先輩も最悪だとボヤいていた。
誕生日だけはお祝いをしてもらい、久々にゆっくりすることができた。デートをして、プレゼントには名前入りのボールペン。白くて美しい、滑るような書き味のペン。
学業が上手くいくように。不安があっても払拭してくれるように。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 202人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あさなさな(プロフ) - pumpkinさん» たくさん読んでいただきありがとうございます！色んなホソクさんを楽しんでいただけたらと思います。なんとなく似てしまうのはご愛嬌笑 (9月11日 18時) (
レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - 本当にあさなさなさんの世界のホビ素敵すぎます。全作品読ませてもらってます。癒しの時間をいただいてます。素敵な作品をたくさんありがとうございます！！ (9月8日 11時) (レス) @page50 id: 3dc2269bbe (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - 鹿さん» 長いのにありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！こちらはもっと山あり谷ありですね笑 (8月10日 17時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - うわあ三日で頑張って全部読みました！最高ですね！こんなにリアルで切なさを描いた小説初めて読んだ気がします。 (8月10日 3時) (レス) @page50 id: 6f7661d487 (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - フネ55さん» 楽しくて悩ましい大学生活を描きたかったので、嬉しいです！微々たる供給ですが、楽しみにしてくださってありがとうございます！ (7月23日 19時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あさなさな | 作成日時：2023年5月31日 17時
