260:尊敬 ページ12
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TH「ここで一緒に、イシクラゲのスープ作ったね」
そうだ。
最初に家に押しかけられたのは、イシクラゲパーティーだった。そこでホビオッパにボトルを置かれて、あれよあれよと溜まり場になった。
『またイシクラゲパーティー、するんですか?』
TH「今度はAも一緒に採集しようねって言ったじゃん」
『確か、ボムギュもですよ』
TH「いーっぱい採ろうね」
ひひっといたずらっぽい笑顔で、こちらに視線を流す。
『八人いたら、すぐなくなりますよ』
TH「新入部員もいてくれたら嬉しいな〜」
『ふふ、一人でも増えてたら良いですよね』
二人で普通に話せてる。
こうやって大人数の中で、適切な距離でいる内に、時間が解決してくれるのかもしれない。
遭難のこと、うやむやにしてしまいたくなかったけれど、ちょっぴりズルしても良いのかな。
今の穏やかな関係を掘り返して荒らす必要、ないよね。
TH「ホソギとは、上手くいってるみたいだね」
カチャンと、お皿が高い音を立てた。
『あ…はい』
TH「そんなに構えないでよ」
狭い廊下で肩と肩がトンとぶつかる。
『テテ先輩、あの…』
TH「あのね、A」
遮って一度手を止めたテテ先輩は、真っ直ぐに私を見ていた。
揺るがない、細胞の奥まで見透かされそうな瞳。
TH「俺、ちゃんとできるから。
もうAの事、好きじゃないよ」
『…すみません、私ちょっと態度があからさまでしたよね』
顔を逸らしてわざと明るい調子で声を出す。
もしもテテ先輩の目に、自惚れみたいに映っていたのだとしたら、イタすぎる。
TH「そうじゃない!そうじゃなくて、」
『ごめんなさい。
自分から仲良くしたいなんて言っておいて、こんな、変な感じにしちゃって…』
TH「好きだよ。
……だから、好きじゃない。分かる?」
ひっそりと、少し先の喧騒にかき消されそうな声だった。
じっと突き刺さるような視線の方を向くことは、できなかった。
『私もテテ先輩のこと、人として尊敬しています』
これは、ずっと考えていて、揺るがない一つの答え。
ふっと空気が緩んだ。
TH「ありがとう。
なんか…うん。こういうのも良いね」
洗い物が終わって戻ると、もうスッキリ片付いていた。
ジミン先輩がテテ先輩に閉会の言葉を求められ、不満を言いながらもまた長く話し出したため、全員に強制終了させられた。
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あさなさな(プロフ) - pumpkinさん» たくさん読んでいただきありがとうございます!色んなホソクさんを楽しんでいただけたらと思います。なんとなく似てしまうのはご愛嬌笑 (9月11日 18時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - 本当にあさなさなさんの世界のホビ素敵すぎます。全作品読ませてもらってます。癒しの時間をいただいてます。素敵な作品をたくさんありがとうございます!! (9月8日 11時) (レス) @page50 id: 3dc2269bbe (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - 鹿さん» 長いのにありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!こちらはもっと山あり谷ありですね笑 (8月10日 17時) (レス) id: 182cc2cbf3 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - うわあ三日で頑張って全部読みました!最高ですね!こんなにリアルで切なさを描いた小説初めて読んだ気がします。 (8月10日 3時) (レス) @page50 id: 6f7661d487 (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - フネ55さん» 楽しくて悩ましい大学生活を描きたかったので、嬉しいです!微々たる供給ですが、楽しみにしてくださってありがとうございます! (7月23日 19時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2023年5月31日 17時